雲から覗く太陽の日差しが地面に突き刺さる。
見上げた空はすっかりと晴れていてついさっきまでの雨を疑った。畳んだばかりの傘にはまだ水滴が残っていて、持ち手の方から一滴の雫がすうっと落ちた。
辺に残った水溜りには憂鬱げな顔をした私の顔が映っている。何かが気にくわないような表情。
じっと眺めていると、不意に目の前から声がした。

「あれ、珍しいね。杏里ちゃん?」

ばっと顔を上げると臨也さんがいた。
私がきょとんと目を見開いていると臨也さんは満更でもない笑顔で「どうしたの?」と言った。

「今日も可愛いねえ、杏里ちゃん」
「か、からかわないで下さい!」

可愛いだなんてお世辞でも言わないで欲しい。臨也さんはいつもそうだ。私に会う度に可愛い可愛いと言う。どうしてそう簡単に言えるのだろうか。
水溜りには、より一層眉を寄せる私の顔。ああどうして彼は気づかないのだろうか。

「杏里ちゃん、好きだよ」
「・・・聞き飽きました。それに、臨也さんには・・・・色んな女性にそう言ってるのでしょう?」
「へ?」
「臨也さんはどうして私に構うんですか?私以外にも、女性はたくさんいるのに」

私がそう言ったら、彼はおかしそうに私を見た。何かおかしな事を言ってしまっただろうか?
すると臨也さんは咄嗟に私の手を掴むと自分の胸へと寄せた。
すると臨也さんは咄嗟に私の手を掴むと自分の胸へと寄せた。ぎゅっと抱きしめられ、心臓がきゅっと引き締まった気がする。
臨也さんは私の腕を掴んだまま耳元で囁いた。

「杏里ちゃんだけだよこんな恥ずかしいこと言うの」
「いっ臨也さん」
「ねえ杏里ちゃん。俺ね、本当に杏里ちゃんのこと好きなの」
「っあ、え・・・え・・・?」

時間が止まったかのように私の身体は動かない。
臨也さんはそんな私を見ると私の目尻に唇を寄せた。ちゅ、と可愛らしい音がしたかと思えば臨也さんはゆっくりと唇を離し口を開いた。

「ふふ、本当杏里ちゃん可愛いね!」
「っ馬鹿、臨也さんの馬鹿・・・・。私、も好きです・・・」
「・・・・!杏里ちゃん・・・」

彼は私の顔色を伺うと何かを閃いたかのように指をぱちんとならした。

「ねえ杏里ちゃん、デートしよう」


恋をするように嘘を吐いて、夢を見るようにキスをして

水たまりに映るのは手をつないで歩く幸せそうなふたり。



◇◇◇
小枝様よりいただきました。
こちらこそ相互、ありがとうございましたっ!
文才あるし羨ましいですっ!!
杏里ちゃんの最後のデレがかわいくて仕方ないですっ!!←

本当にありがとうございました!!
これからもよろしくお願いします(^^)
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