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「辰巳、遊園地のチケットいらない?」
「は?」


第一声、姉貴によって俺、ベル坊、ヒルダは遊園地に来ている



「ほう…遊園地とは初めて聞くところだ」
「ダーッ!」
「魔界にはねーのかよ」
「似たようなところはあるが…人間界の遊園地はやっぱり違うな。雰囲気とか」

そりゃ魔界と人間界自体雰囲気ちげーよ
男鹿は小さくツッコミを入れる
ヒルダとヒルダに抱えられてるベル坊は目を輝かせて園内を見渡していた

「お、男鹿。あの速い乗り物乗りたいぞ」

ヒルダがそう言って指差したのはジェットコースター
何やらベル坊も乗り気なようで「ダーッ」と叫んでいる
いや、赤ん坊は乗れねーから
ベル坊を置いて乗るか諦めるかどうするかとヒルダに持ち掛けるが「坊っちゃまとはなれたらお前が死ぬだけだが」と言われ、ピシリと固まる

「私一人で乗ってくる。お前は坊っちゃまと待っていろ」

ヒルダはそう言うと少々苛立っているベル坊を俺に押し付け、颯爽とジェットコースターに向かってしまった
こうやって見るとあいつが楽しんでるのは何やら新鮮だ、なんて考えながらこの次はどうしようかと乗り物を考える
俺も一緒に遊べるような…そんな乗り物はないのか…!?



「ふう…なかなか楽しかったぞ。スピードはもう少しあげてもいいと思うがな」

やりきったかのような顔つきで戻ってくるヒルダ
思いの外楽しかったのか表情がいつもの冷めた顔と違い、生き生きしている


「さて、次はどうしようか…」
「お化け屋敷」
「お、ばけ…?」

目を瞬きさせて首をかしげるヒルダに「そう、」と頷く








「…悪魔がお化けごときにビビるものか」


ヒルダはそう言ってなかなかお化け屋敷を入ろうとしない
それより他の乗り物がいいだの、お化け屋敷は乗り物じゃないだの頑なに避けるヒルダに俺自身も少し苛立ちを覚え挑発をしてみる


「ああそうか。お化け苦手なんだ?」
「そんなわけないだろう」
「いや別にいいから認めたら?悪魔の癖に苦手とか…おっと悪い悪い」
「だから苦手などでは…!!」
「行きたくねーんだろ?」
「…行ってやろうではないか」


かかった!
心の中でほくそ笑み、ヒルダの手をとる
ヒルダは驚きの表情だったが気にせずお化け屋敷まで連れていく

着いたお化け屋敷はいかにも怖い感じの外観でベル坊は少し震えていた


「さぁて!入るぜ!!」
「あ、わ…ま、待てっ!!坊っちゃまが怖がっておられる!!」

ヒルダが立ち止まり、ベル坊を指差せば本当に怯えていた──所謂ガクブル状態だ

「坊っちゃまが楽しめないのならやめだ!」
「ふん。抜かり無いからな俺は」


スッとハンカチとヘッドフォンを出し、ベル坊の目をハンカチで隠し、耳をヘッドフォンを付け音量をあげて塞ぐ
ベル坊はそれによって怯えなくなり一人でノリノリになっている


「これで安心だな?」
「〜〜!」

ヒルダは悔しさと怯えた表情を交差させていたが、有無を言わさずお化け屋敷に連れていく


「うがああぁ!!」
「キャハハッキャハハハ」
「うらめしや〜…」


自分達の前方や後方は叫び声が聞こえているというのに当の俺たちは悲鳴など何もない

実はヒルダは怖がりなんじゃと思っていたが…やっぱ悪魔だしなぁ
俺もお化け屋敷を怖がったことはないから(むしろ怖がらせるほうが性に合ってるから)なにやらつまらないまま終わりそうだ
ま、いいかなんて黙々と歩き続けるとクンッと服の裾を掴まれた
何だ、と掴まれたほうを見るとそれはヒルダの手だった


「ヒル…」
「決して怖いわけではない!!迷子になりたくないからであってだな…」
「…あっそ」
「──…あのっ」
「ほらよ」

パッと右手を差し出す
ヒルダは途端に顔を赤く染め上げ目を泳がせる

「べ、別に手を繋いでいたいとか言ってないっ!怖くもないし!」
「俺も繋ごうなんて言ってねーよ?」
「!…ッ」

どうやら怒らせてしまったようだ
もういいっ!と半ば涙目のヒルダは不覚にもかわいいと思ってしまうほどだった

「な、何を笑っているッ!?」
「手繋いでやるから目、瞑れば?」


ヒルダは手繋ぎを否定した後だからかなかなか手を繋ごうとしない
ふう、とため息をついてから無理矢理ヒルダの手を握る


「!?」
「行くぞー」
「〜…あ、りがとな」

ボソボソっと聞こえた声を聞き逃すことなく拾い、自分の顔が熱を帯びるのは言うまでもなかった





◆◆◆
関係無いけどヒルダはツンデレかクーデレだと思う←
…ベル坊はおばけ楽しみそうだけど、今回は、ね。怖いってことにしましょう(´・ω・`)



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