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ぐらり


ただ、普通に廊下を歩いていただけなのに

ぐらり


視界が歪む





「ヒルダー?大丈夫かお前」
「だぶー?」


とん、と何かに当たり眩む目でそれを見るとどうやら私は男鹿辰巳の体に体重を委ねていたようだ


「ああ、すまない…」


ぐっと力を入れて男鹿から体を離す

体が重い

頭にガンガンと痛みが生じる


「ヒルダ…お前、」
「次は体育だったか…。着替えるのを忘れていた」
「え、あ…」


男鹿の服装を見て次の時間割りを思いだし、教室に戻る
ふらふらの足取りに「大丈夫か」と呼び止められたりしたが別に耐えられる痛みだし、そこで「大丈夫じゃない」など言えない

…何か、負けた感じがするではないか



何とか体育の授業に間に合い、何事も無く、平然とした顔をして授業を受ける



ああ、休めば良かった

頭が…痛い


フッと意識が消えかけ、ガクンと膝を落とす


「ヒルダさん!?」


異変に気づいた邦枝が私に駆け寄る
あれだけ互いに張り合っているというのに、お人好しめと心の中で呟く
だが、そんなところがあるから嫌いになれないのだ



今だけ、頼らせてもらおうかと意識を手放し倒れる──筈だった
しかし、またも何かに当たり、床に倒れることはなかった



「やっぱりお前、熱あるじゃん」


上から降ってきた言葉の主は憎たらしくてでも同じく嫌いになれない奴、男鹿だった




「っ!?な、何を…」


突然の浮遊感に驚きを隠せずいたが、その理由が分かることによって恥ずかしさが入り交じる

私は男鹿辰巳に所謂お姫様だっこで抱えられていたのだから



「お、ろせ!」


振り絞った声で降ろしを乞うも無視をされる始末
じたばた暴れようにも体力がない
苛立ちを隠さず出していると男鹿はスタスタ歩き出す
何処に行くつもりだ、と聞く前に「保健室な」と応えられ、することが無くなった口をしぶしぶ塞ぐ


「お前熱ぐらい分かれよ」
「…。熱だなんて判断など難しいわ…」
「普通は判断できるんだよ。とにかく……寝ろ」


いつの間にか着いた保健室のベッドにゆっくりと下ろされる


「早く元気になれ。ベル坊も心配してんだからよ」
「だあ…ぶ…」
「坊っちゃま…」


男鹿の背中にいた坊っちゃまは小さく顔を出し、心配そうに私を見る
その様子に私も小さく笑みを返す

「ありがとうございます坊っちゃま」
「あだっ!」
「…よし、じゃ戻るか」
「だぶっ」



「待て、男鹿」



保健室のドアを閉めようとする手前で呼び止めると「?」と首をかしげ男鹿は私を見る

「あ、あ…あー…」
「?ど、どうしたヒルダ!?」
「あ……りがとう…」


なんだ、ただお礼を言うだけなのにやけに照れ臭い
かああと顔を熱ではない意味で火照らせるのが自分でわかるほど


「ヒルダ…」
「ッ寝る!!」


がばっと毛布を顔まで被る

「……どういたしまして」

顔を見ていないから分かるわけないが、フッと笑われた気がした
そしてドアを閉められる


私はまだ顔を火照らしたまま暫く眠ることができなかった










◆◆◆

二人は学校の授業なんて真面目に受けねーよ!ってのはスルーでお願いしますm(__)m





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