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雨、か…


しまったな…とスーパーの店内から外の景色を見つめる

少しばかり強めの雨が降っている
来たときは晴れていたと言うのに…

そう、晴れていたのだから傘なんて持って…




持ってるじゃん


武器の愛用傘を手に持ってるじゃないか


何を考えていたのだ、私は
まるで何かを期待していたみたいだ



「…あほらし」


とにかく傘があるのだから帰るとしよう、とスーパーから出ようとした寸前

ものすごい勢いで見知った奴が入ってきた


赤ん坊を背負い、傘をしっかりと握って





「貴様…」
「お前が傘忘れたって姉貴に聞いたけど……」



男鹿は私が握っている傘を見て、「あ…」と呟いた



「お前そういや傘持ってんじゃん」
「今さら気づいたのか」


馬鹿者、とは言わない
私だって気づいた時間はさほど変わらないのだから



男鹿は「じゃあ傘要らねーじゃん」とうだうだと愚痴を溢す


「ったくよ…せっかく人が持ってきてやったというのに」
「…うだうだ言うな。見苦しい」
「あ゛ん!?」
「ほら、帰るぞ」


男鹿の持ってきた傘を引ったくり、バサッと外に向けて開いた



「荷物は私が持つから…傘を持つ役目はお前だろう?」


ぽかんと私を見ている男鹿に傘を差し出し、ニッと笑ってやる


「…お前の傘は使わねーの?」
「私のは武器だからな。…早くしろ」



しばらく動かなかった男鹿は「ほらよ」とぶっきらぼうに傘を私の差し出した傘を掴んだ




私の持っていた買い物袋も…って、



「お、おい!そっちの荷物は私が…」
「うるせーよ。持つっつってんの」
「……」


なんだこの男…
役目をとられてしまったではないか

こいつの時々発揮する優しさはやはり嬉しいと気恥ずかしいが混ざった感覚に陥る

私が先程まで期待していたのはこれだったのかもしれない



「…ありがとう」
「!お前お礼が言えたのか!」


その一言を最後に男鹿を片足で蹴り、背中にいた坊ちゃまを抱き上げる


「死ねドブ男!」



前言撤回だ
こんな失礼な奴に期待も何もあるもんか!










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