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下校途中にバッタリと遭遇した


バーテン服にサングラスを身につけた私の…彼氏、平和島静雄さんと、ドレッドヘアの色黒で優しい田中トムさん
そして最近よく一緒にいる金髪ロシア人のヴァローナさん


彼女と会話したわけでなければ会うことだって今日が初めてだ
存在を知ってる理由はよく静雄さんが話題にするから
甘い物好きで、どこか自分に合うらしい
正直、そんな話をされて嬉しくはない


けれど楽しげに話す静雄さんを見たら嬉しいし、話を変える気だって無くなる
つまり矛盾しているのだ



でもやっぱり静雄さんとヴァローナさんが並んで和気藹々と言葉を交わしているのを見ると胸がきゅっと締め付けられる

自分以外の女の人と仲が良い彼氏を見てしまったからか、それとも二人がお似合いすぎて何も言えないからか


「杏里ちゃん?」



トムさんに声をかけられて我に返る
何をしてるんだろう私は

じっと突っ立っていた私に静雄さんが「大丈夫か」と近づいてくる


それを一歩後ろに下がってかわした




「あ、えと…さよならっ」


とにかくその場を抜け出したくて小走りで走り去る
離れた位置から「杏里!?」と呼ばれたが立ち止まることも振り返ることも私にはできなかった



「どうしたんだ、一体…」
「…不明瞭です。何かあったのでしょうか」
「…静雄、今日もう仕事無いから。杏里ちゃん追ったほうがいいべ?ふらついてたしな」
「…。そっスね。失礼します!」
「?先輩のあの焦りようは何なのか、説明を要求します」
「あー…察しろ」
「??」







走る

ひたすら走る


正直すごく心配だった

会ったときだって途中から俯きっぱなしで固まってたから



しばらくすると杏里らしき人影が見えた


「杏里っ!」




ようやく見つけた杏里はまたも逃げようとしていたので手首を掴まえる

もちろん力は最小限で痛がらない程度にしたつもりだ


逃げることをしなくなった杏里は俯き、いつも以上に静かだ
何か話さないと―…



「わ、悪い!手ェ痛いよな…離すから。
……怒ってる、のか?」


手を離して怒ってるかどうか問えばピクリと反応する杏里
手首が痛すぎて怒っているのだろうか…?

すると杏里は俯いていた頭をさらに下げた


「ごめんなさい」
「?」


頭には「?」しか浮かばなくて暫し固まると杏里が顔を上げる


「ヴァローナさんと静雄さんがあまりにも仲良しで、お似合いで…私なんかが彼女なんかで良いのかなって……嫉妬しました。」


だからごめんなさい、と二度目の謝罪をする杏里をコツンと小突いた



「あやまんな」
「でも…ふあ!?」


杏里を自分に引き寄せ優しく頭を撫でてやる
杏里はピタリと固まっていた




「ヴァローナとはただの仕事仲間…いや、ダチ…か?まあ、恋愛感情とかはお互い無いから安心しろ」
「怒って、ないんですか…?」
「あー…むしろ嬉しい…けど?」
「―…!!?」


やば、何か顔熱い
ちら、と杏里を見ると杏里も顔を赤く染めていた

さあどうする…?
次こそ話題を出さねば気まずい





「腹減った!な、減ったろ?よし、食いに行くぞっ!」
「は、はいっ!わっ…」



ぐいっと杏里の手を握って赤面二人で池袋を歩いていった―…









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