※臨狩
はあ、ため息をついて只今隣にいる女──狩沢に目を向ける
このちょっと洒落た喫茶店でも所謂BLの漫画やら小説やらを読める狩沢には心底恐れ入る
しかも、仮にもデートだと言うのにこの始末
「狩沢さ、まだ読むの?それ」
痺れを切らして声をかけると狩沢はこっちの心情に気づいたのか本をとじる
「あは、ごめんごめん」
「…ま、いいけど。にしても飽きないね」
「これは一種の娯楽だよ〜?飽きるなんてあり得ない!イザイザにだってオススメだよ!」
「オススメしないでよ、そんなの」
「えーっ…楽しいのに。シズちゃんに攻められるイザイザ…!ケンカップル!最高ッ!!」
「妄想を言葉にしないで。シズちゃんを出さないで、虫酸が走る」
しかしこうなった狩沢はしばらく止まらないのは重々承知だ
男同士の恋愛話が延々と語られる
しかも彼氏である俺とその天敵のシズちゃんが題材となっているわけで…
腐女子の想像力…いや妄想力は底知れないと実感する
我ながら何故狩沢を好きなのか…
「基本イザイザは受けだよね!あ、でも攻守交代もありかな…シズちゃんがネコってのも無しではないけどイザイザのがネコかなー、シズちゃんはタチのが合ってるしね」
分かりもしない言葉を羅列していく狩沢についていけず、少し冷めたコーヒーを啜った
ため息を吐きたくなるが、狩沢と付き合って半年…彼女の趣向は分かるようになったし、それなりの知識もつけた
ここまでよくやったと俺を誉めてほしいものだ
…とにかく、ついた知識でなんとなくなら分かる言葉は出ていたので理解をしようと頭を動かした
えーと、ネコは受け…だから…
ん?つまり俺が受け…つまり女役!?
「ねえ、イザイザは──っ!?」
何だか分かった瞬時にムカついて、俺の方を向いた狩沢の頬にキスを落とした
当然それは不意打ちで、それに驚いた狩沢は目を見張っていた
「なっ、なにっ!?イザイザっ、ここ喫茶店っ!」
「なんだ、喫茶店って分かってたの」
「分かってるわよ!」
照れと怒りで真っ赤になって「もーっ」と声を出す
それが反則的なまでに可愛くてもう一度頬にキスをする
どうやら混乱しているようで「ー!!っ、イザイザちょーっ!?」と言葉が言葉になっていない
流石に翻訳はできないなあ、と狩沢の頬に手を当てる
ビクッと反応する狩沢に小さく笑みをこぼして口を開く
「あのね、これはデートでここは喫茶店。なのに彼氏を話から置いてけぼりにして、それ以降は構ってくれないなんて、酷すぎない?」
「え、あ……ごめん」
ちゃんと反省しているようで頭を下げて謝ってくる狩沢
そんなことされればもちろん許すよ、当たり前じゃないか!
けど本題はこれからだ
下げた頭を上げるよう、頭を優しく撫でてやる
「…ま、その事もなんだけど、こっちが重要」
「え?」
他に何かしただろうかと首を傾げて上目使いで見てくる狩沢(必然的に上目使いになるのだが)
それ反則だって!かわいいよ!
…じゃなくて
「俺はネコだとか受けだとかの話。俺は受けじゃないよ?そもそも俺、ネコなんてかわいいものでもないし。て言うか、ネコは狩沢のがお似合いだ。だから…しっかり教えてあげるね」
「え、あのイザイザ…?目付きが…」
冷や汗をかいている狩沢をよそ目に残っていたコーヒーを飲み干してティーカップを置く
「さーてそろそろ帰ろうか、俺ん家に」
にっこりと笑顔を見せて狩沢の荷物(BLのアレコレ)をそれの持ち運び用鞄に詰めて持ち、会計を済ませ、狩沢を後ろに店から出る
「俺ん家って!?」
「別に狩沢ん家でもいいよ。あ、その方がいっか、荷物運ぶついでに」
「!?な、何する気!?」
顔を真っ赤にした狩沢が追ってくるような足取りで後ろをついてくる
くるっと後ろを向いて笑みを浮かべて狩沢に近づく
「んー?そうだなあ…トランプとか」
「え、…トランプ、か…」
「何?狩沢、変な想像した?別に期待通りにしてあげてもいいよ〜?」
ホッとした表情を見せた狩沢にすかさず言葉を返すと「えっ」とまた赤面に戻った
かわいいなあ、なんてニヤついているとそれに気づいたのか「イザイザの馬鹿!」と下を向いてしまった
さて、どうしようね
そろそろこっちを向いてもらおうか
ほら、機嫌直してよ
□□□□□
通りすがりA様っ!
この度は素敵なリクエストをありがとうございました^^
相手は誰でも、とのことだったので臨也にさせていただきました(^^ゞ
ドタチンもシズちゃんも悩んだんですが…
狩沢さん、書いてみたかったんでリクエスト、すごく嬉しかったです(*^^*)
出来の具合は…(苦笑)
勢いで書いちゃった感じなので…苦情等、受け付けます(--;)
通りすがりA様のみフリーです!