「杏里ちゃんって、シズちゃんと付き合ってるんだって?」


授業中、席の前方に座っている男──折原臨也はいきなり後ろへ振り返り今の台詞を放つ
不意に言われた言葉に杏里は動揺したように手に握っていたシャーペンの芯を折る


「ち、ちが…えっと」
「動揺しすぎー。でも否定する必要ないって」


臨也はニコッと杏里に笑みを返す
否定しようと口を動かすものの何を言えばいいのか分からないでいた杏里は臨也の笑みで口を閉じた
だってこの人は数多の情報を駆使している情報通
嘘をついたところで何ら変わりないのだから


「別に教師と生徒がいけません!なんて言わないよ」
「…そうで」
「けどこれを言いふらさないとは言ってないよ」
「!?」
「驚いた顔しちゃって、かわいいなぁ」


臨也はまるで悪魔のように笑う
杏里はといえば固まって焦り出す
言いふらされて迷惑するのが自分だけなら構わない、と思う杏里だが、臨也にとって迷惑をかけたい相手はシズちゃん──平和島静雄先生なのだから、と同時に理解する

どうしたらいいのだろう

杏里は机に乗っているノートに目をやり、ぐるぐると考えをまわす
すると何か大きな影が杏里と臨也の間に入る
その影を辿ると教師、静雄先生が杏里と臨也を見下ろしていた
そして静雄の手に丸めて持っている教科書はぶんっと音がして臨也の頭に落とされる

「痛っ!シズちゃん、体罰反対!」
「うるせえ。後ろ向いてしゃべんな、授業中だ。園原の邪魔すんな」
「だってシズちゃんの授業退屈だもん。ていうか杏里ちゃんは庇うんだ?」
「庇っちゃいねーよ。園原は指導室な」
「えっ!?」


静雄はそう言い放して授業を再開した
臨也は渋々前へ向き直り、自分の席にうつ伏せになって寝てしまう
杏里は、なぜ「指導室」にまでいかなければならないのか、些か疑問に思いながら授業に目を向けた






キーンコーンと授業終了の鐘が鳴る
ガヤガヤと休み時間を満喫しているクラスの中、杏里は大人しく静雄の後ろを辿り指導室へと足を運んだ

指導室に入り、ピシャリとドアが閉まる
杏里は二人だけの空間に少しだけ胸を跳ねさせながら静雄を見上げる


「あの、先生」
「ん?」
「私はなぜ指導室にまで呼ばれたんですか?」


自分の疑問に思っていたことを聞いてみると静雄は「ああ、」と声を出した


「臨也の奴が『杏里は庇うんだ』とか言ってたから咄嗟に、な」
「あ…まあ、なんとなくそんな気はしました」
「けどま、今回は臨也のおかげか」
「何がですか?」


杏里は首をかしげて静雄を見上げる
静雄は男らしい笑みを浮かべ杏里の頭を撫でた
その手は最終的に杏里の頬に止まる


「お前と学校でこうして二人きりになれたからな」
「!!」


ぷしゅう、頭から湯気が出そうな程に顔を赤らめる杏里に静雄は「ははっ」と声を出して笑い、杏里を抱き締めた


「せ、せんせっ!?」
「…あー、けど臨也と話してたのはムカついた」
「え?」
「何話してたわけ?」


静雄は杏里の頭に顎を乗せて話し出す
杏里は少し間をおいてから口を動かした


「先生と、付き合ってることバレてて…」
「…あの臨也だしな」
「言いふらす、かもって…」
「…そうか」
「そ、そんなに落ち着いていられるんですか…?」


少し口調を強くして訴えてくる杏里に静雄は「心配すんな」と諭す

「その時はその時で考える。もちろんお前に害無いようにすることが優先な」
「…臨也さんがよく先生は単細胞とか馬鹿とか言ってるけど、その通りですね」
「はは、喧嘩売ってるのか?」
「だって、自分より私を優先するなんて…馬鹿ですよ」


未だに抱き締められてる状態から杏里も静雄の背中に腕を回して抱き締めた
静雄はその行動に気づき、抱き締める力を強くする
もちろん杏里が痛がらない程度に調節して

時間は長いのか短いのか、鐘は休み時間を呆気なく終わらせる
杏里はハッとして教室に戻ろうと抱擁から離れようとするが静雄がそれを制止させた


「先生、もう授業…」
「ここでしよう」
「なっ…」
「まだ離れたくねーんだよ」


その言葉に杏里はかあっと赤くなり、フウとため息吐いて「それは私も同じです」と静雄を見上げ微笑んだ


恋の授業を始めましょうか
とろけるような甘い授業を

「ところでこの時間、何の授業?」
「えっと、数が…」
「保健体育が一番得意だ。それにしよう」
「!?」


□□□□□
お待たせしました!
小枝様、この度はリクエストありがとうございます!!甘甘な静杏+臨
できれば先生と生徒、とのことだったのでそれで書かせていただきました!
甘いかな……?(^-^;
こんな文ですが何か直してほしいところとかありましたら遠慮なくどうぞ!
小枝様のみお持ち帰り自由です^^


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