パクノダとお姉さん


懐かしい声が聞こえた気がした。

ねぇパク、こんなところにいたらもったいないよ。私と一緒に外へ行こう。もっといい景色を見せてあげる。

ゴミ山の頂上で言われた言葉。私より一回り歳上の彼女は大きなフードを深く被っていた。顔はよく見えず、今ではもう全く思いだせないが、常に弧を描く彼女の口はひどく印象的で挑戦的な態度だったのは覚えている。
だから信じられなかった。太陽が昇り始めたあの薄暗い空の下、山のてっぺんに座っていた彼女を見つけた時。悲しげな表情で涙を流す彼女の目が私を捉えたあの瞬間。時が止まったかのような感覚に息を呑むことさえできなかった。

ねぇパク。ここは酷く悲しいよ。

朝日に照らされて、白く映る山脈を見て彼女は言う。

全てがここに来るせいで、この街に住む人間は世界の美しさを知ることが出来ないんだ。もったいないと思わないか。

流星街で精一杯生きる人の姿も綺麗だと、幼心で言ってしまえば彼女は困ったように眉を下げ、だからここは悲しいのだと呟いた。

やりたいことも出来ず、なりたいものにもなれない。外の世界でできることはここでは何一つ出来ない。努力をするのも生きるため。彼らはもっと美しい生き方ができるのに。

空はもう赤みを消して、青さを取り戻していた。彼女は山を下り、私の元へ近づくと、膝をついて私に聞いた。

ねぇパク、やっぱり私と一緒に来ない?

首を振って断れば、彼女はクスリと笑ってフードを被る。いつもの挑戦的な弧を描くと、私の頭を優しく撫でた。

最後に話が出来て良かったよ。またいつか。

離れていく背中を見つめると、もう二度と会えないような気になって、彼女の涙につられて泣いた。


あれから何年経つだろう。幻影旅団を結成し、当時の彼女の歳を越す。あとは流星街を離れるだけだ。見納めようと、少し早く起きてみれば前見た景色と重なった。
彼女はきっとここを愛していた。この街で必死に生きた自分の姿を太陽の光に照らされた山を見て思い出す。
生まれ育ったこの街に、別れを告げる挨拶で、あなたは涙を流したのでしょう。
わかりもしない彼女の涙に想いを馳せる。
私はあなたにまた会いたい。その時私は言うだろう。
うつくしい世界を見せて欲しい。
そして私は歩きだす。
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