No.00 Sample
ここがきっと人生の分かれ道なのだろうと、不意に悟ることがある。
「選べよ。このまま退屈に、平凡に生きて死ぬか。それとも、おれと一緒に、ここから出ていくか」
そう言って手を差し出したディオの背のずっと向こうには、大地を赤く染めながら沈んでいくお日様があった。空高く昇っているときはあんなに眩しくて、何者にも囚われないみたいに唯一無二の明るさでいるのに、こうやって地平の線に真っ二つにされながら姿を消そうとしているお日様は、なんだか悲しげだった。
彼の髪は金色の刺繍糸みたいに光を透かして、きらきらしていたけれど、彼から聞こえてくる声はひどく暗いものだった。彼の鋭い眼光は斜めに差してくるお日様の光よりも強く、わたしを捉えた。
いま思えばきっと、ディオは――わたしのたったひとりの幼馴染は、わたしに手を取ってほしかったのだ。
「おまえがおれのものにならないなら、おまえの顔を二度と見たくない」
だって、そう言ったディオの瞳が、ひどく悲しげだったから。
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