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 ジョースター家の家政婦ヒューズは、1873年の春のいくつかの日のことを、次のように書き留めている。


3月3日
あと1か月ほどでジョナサン様の御誕生日。旦那様から、贈り物についてご提案。
グレートデーンという犬種は初めて聞いた。ひとまず、お手紙3通は用意。

3月11日
ウィルソンさんからの返事。だめだった。国内ではほとんど頼る伝手がないので、ドイツ、フランスの知り合いをあたるしかないとのこと。御誕生日に間に合わせなければ。
グラディスがまたものを割ってしまった。旦那様は笑っていたけれど、お皿にボトル、今回はデキャンタ。今年に入ってから3回目よ。あの子の配置を変えるべきだわ!明日相談する。

3月15日
午後から来客だった。ジェイムズ様からのご紹介の候補者の、ミス・クラーク。
彼女がお越しになったとき、御召し物は暗い色で、黒いレンズの眼鏡をかけ、黒い手袋をして,黒い布を口に当てていたものだから、驚いてしまった。全身が暗い色で覆われていて、まるで喪に服しているようだった。あとから旦那様が仰ったのは、彼女は日光にあたると皮膚が赤く痒くなってしまうから、外出時にはあのような格好をしているということ。帽子ももちろん黒かったけれど、その下のきれいに編み込まれた御髪は真珠のように白いブロンドで、とても美しかった。
面接後の旦那様はとてもご機嫌だった。外見は風変わりだけれど、心映えは優れている方なのだろうか。

3月28日
あと一週間でジョナサン様の御誕生日。もう5歳になられるなんて。とても丈夫にお育ちになって、メアリ様も喜んでおられるだろう。あの日からもう5年も経つなんて……歳をとると時間の流れが早すぎる。いつも言っていることだけれど。
ブラウン様からのご紹介の、最後の候補者の面接。4つの面接が今日で終了。今日の方は……そうね、ノーコメント。
忘れない!:花壇の植え替えの依頼、ペーパーの補充

3月30日
ジョナサン様の御誕生日まであと一週間。ウィルソンさんからの返事待ち。間に合わなかったらどうしましょう。あぁ、はやく返事を!
ガヴァネスがミス・クラークに決定。面接後の旦那様のご様子から、やはり、という感じ。彼女は多才な方で、絵画のレッスンも可能とのこと。この前お見かけしたときはお若い方に見えたけれど、とても優れている方なのだろう。お会いするのが楽しみ。

4月1日
気持ちのいい月の始まり。ウィルソンさんからの返事がやっと来た!ぴったりの子が見つかったって!本当によかった。両親ともに健康、好奇心旺盛、おまけにハールクイン。ウィルソンさんにはたっぷりお礼をしなくては。午後、旦那様にも報告。


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