4.






「むしろ、羨ましい。
それも一つの才能だし?」



私はそう言い切った。
いや、宣言してやったよ。


そしたら大きな瞳がこれでもか!って位に見開かれて、
本当に、驚いた顔をしていた。

視線だけは真っ直ぐに、私を捉えて。



同情なんて、一切してない。
それを伝えるために、私は精一杯笑った。

大丈夫だよ、って伝える為に。
あなたが大好きよ、ってわかってもらう為に。


そしたら―――――、
張り付けた笑顔なんかじゃなくて、
本当に心からナルトに向けての温かい気持ちと、笑みが溢れてきた。



私の顔を、瞳かな?をずっと見続けていたナルトが、
段々落ち着いてきたのがわかって、ほっとした。





「名を、聞かせてくれないか……?」


見つめ合ったままだった私たち。
ナルトから、落ち着きを取り戻した声で話し掛けられた。


やば、そう言えば私、まだ名乗りもしてないのにがばがばナルトには色々聞いたりしてもらったりしてた。

いけない、初対面の人への礼儀はちゃんと両親から教えて貰ってるのに。



「あ、ごめんなさいっ
名乗ってなかったね。私、黒木麻夜っていいます。」


遅くなりました、って気持ちを込めて、丁寧に言った。

私の名前を聞いて、ナルトが優しく微笑んでくれた。
良い名だな、って言って貰えてる気がして、
何だか嬉しくなったよ。



でも、それ以外に反応がない〜……。


「……あの、ナルトさん・・・?」


恐る恐る声掛けると、ナルトさん?は
はっとしたようにこちらを見直した。

うん、イケメンになる兆しがバンバンだ。



「……ナルトで、いい。麻夜。」



初めて、ナルトさん、もとい、ナルトに名前を呼ばれた。


やばい、照れる…………。



嬉し過ぎて死ねる。


絶対顔が紅いんだろうなー、
なんて、鏡見なくても触んなくても分かる。

なに?ナルト格好良すぎる警報発令なんですけど?

てか、明らかに二、三歳の幼児なのに、
この色気は反則ってか法律違反だと思いますっ!


悔しいから、私も言われた通りに呼び捨てで呼んでみた。



散々私の現世?では呼んでたけど、
本人目の前でって何か勇気がいるな。



「……な、ナルト?」


どもっちゃったよ。
でも呼んでやった、ハハ。


やばい、私まじでパニクってる。



「……何だ?」


「え、いやー…、呼んでみただけです……。」



何だなんて返されるとは思わなかったです、はい。
「え?」って言っちゃったよ。


でも、ナルト、って呼んでも、
今までの世界では、絶対返事なんて返ってこなかった。
だって、「うずまきナルト」は紙の中の世界の人。

私たちとは違う世界で生きてる人だったから。


名を呼んで、返事が返ってくる。
それだけで、なんて素晴らしいんだろう、って思えてくる。




「ナルト……。」



「だから、何だ……?」



「へへ……、君の名前を呼んで答えが返ってくる状況が嬉しいだけ・・・っ。」



またナルトと呼び掛ければ、少し間を置いて、返事が返ってきた。

嬉しい、すごく嬉しい。
やばい、泣きそうだ。



「ナルト。」

「……何だ?」


「ナ〜ルトっ」

「・・・・ああ。」



「ふふっ、夢の世界だわ。」





死神さん―――――、
何だかんだ、やっぱり死んだ事には悲しかったし、悔しかったし、

別の世界って、物語の主人公みたいでドキドキしたけど、
そこは「私」を誰も知らない世界で、
「私」がいた世界とはまるで違くて、
やっぱりちょっぴり寂しかったり、辛いな、って思ったりもした。



でも――――――、

ナルトに会えた。
ナルトに出逢えた。


それだけで、この世界に来た価値が見出だせた気がしたよ。



両親の居なくなった私に、
元気をくれたのは「NARUTO」の話だった。

ナルトの、親が居なくても、差別されても立ち向かってる姿が、
私の理想だったから。


漫画だけど、私の勇気の源、元気の元だったから。

私は、ナルトに会いたくて、
私が居れるのはあなたのおかげだと、ありがとうと言いたくて、

ずっとナルトを夢見てた。



すごく自分勝手な想いだと思う、
とてもミーハーな事だと思う……、
でも、来たかった――――。



今、ナルトが目の前に居る。
私の呼び掛けに、応えてくれる。



ナルトが、意を決したような顔で、こちらを見てきた。

なんだか私も、緊張してしまうな〜と呑気に考えてた。


「………………。俺が、恐ろしくないか・・・?」



ナルトの言葉に、すごく驚いてしまった。

恐ろしい?あなたを?
………そんな事、例え殺されたって思わないのに。


多分、ナルトも私の事を信じようとしてくれてる、と思う……。

でも、また多分だけど、言葉でそれが欲しいんだと思った。
私の信頼が、本当であるかを。
だったら、私の答えは一つしかない。


私は、ナルトに諭すように、
信じて、と訴えるようにその問い掛けに答えを述べた。


「………。もう、そんなに信用できない子かなあ、私。
怖くないよ、恐ろしくなんて・・・、こんなにも可愛い子のどこを見たらそう思うか教えて欲しいよ。」


私なりの、一生懸命な答えだった。
私の答えに、ナルトは満足しただろうか?

人の気持ちなんて……読める訳はないけど、


ナルトの、優しい、温かい笑みを見ると、
私の答えで良かったんだなと安心した。



ナルトが笑ってる。

漫画で見るようなニシシと効果音が付く笑いじゃなくて、


とても穏やかに、笑ってる。



それを見てると、私も自然と笑ってしまっていた。



→アトガキ。











- 40 -


[*前] | [次#]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -