1.







「……………。」


「……………。」



先程の少しの会話の後、俺たちは無言で時間を過ごしていた。

俺は……、何も言えなくなってしまったというのが正しい。


少女に、どう思われたのだろう―――。

俺が、助けたのが「うずまきナルト」だと知って、
少女は何を思ったのだろう―――。


頭の中は、その疑問でいっぱいだった。



何も言わない少女に、俺は彼女の優しさの様なものを感じた。

きっと、見ず知らずの子どもを損得なしに助けられる少女の事だ、
その子どもが俺だと知って、後悔しても、
悪質な態度を取ることが出来ずにいるのでは……と。


何とも後ろ向きな考えだが、
今までに希望を持ってそれが叶った試しがない俺には、

そう考えていくしかないのだと、
経験から解っている事だった。


さあ、もう去らねば。
この優しい少女が困ってしまう。


俺はそう、ここから逃げ出す為の、
少女が嫌な顔をしてしまうのを、例え一瞬でも見てしまわない為の
言い訳を考えて、立ち去ろうと心で言い続ける。


それでも……、俺の身体は一向に動かない。

そして、どこから来るか分からない少女への期待を
消し去っても消し去っても募らせていく。

そんな自分に、俺は呆れた笑みを溢す。


期待して、反応が変わった事なんてあっただろうか。


期待して、裏切られなかった事なんて、なかった筈なのに―――。



「――――好きだから。」なんて言葉は、
俺を傷付けない為の少女の優しさだ。





「あ、あの・・・。」



そう考えていたら、少女からのか細い声掛けがあった。

何を言われるのだろう…、
俺は、恐怖に似た感情で、その声に答える。


「……なんだ?」



自分でも吃驚してしまう。
俺の声は……震えていた…。


俺のその様子に、今度は少女が驚いた風になった。
が、それもすぐに消え去り、

良すぎる動体視力から、
次の言葉が少女の口から発せられる動きを見た。


――――怖い、怖い、怖い………

俺の中で、その言葉が繰り返される。


「……、あの、変化?解いてみてくれませんか?」



聞きたくないと思っても、聞こえてしまう言葉に、
少女から言われたその内容に、
俺は、先程まで恐怖に怯えていた自分を笑ってしまいそうになった。



―――変化を解いた姿が、見たい……?


「…何故?」



「え、いや〜。」



俺は何故と疑問に思った言葉が、
声に出てしまっていたのだと、
少女の言葉の返しで気付く。



今の俺はどうかしてる―――…

まるで本当に子どもの様だ。



俺が俺の変化に戸惑っていた時、

少女も俺の疑問の返答に困ってしまっている様で、
顔を紅くしたり、沈んだ表情になったりと、

コロコロと表情が変わっていっている。



「っ、詳しい理由は置いておいて、見てみたいってのが理由です。
……だめですか?」


「…………。」




答えがまとまらなかったらしい少女は、
紅い顔で精一杯の懇願をしてきた。

見てみたい、それが少女の本音なのだろう。


俺は、まだ少女を信じる事に躊躇いを持つ心を無視して、
変化を解く印を結んだ。


ぼんっという効果音と、少し色の付いた煙が、何処からともなく上がる。



そうして、煙が消え去れば、
本来の姿をした俺と、
じっと眺め続けていた少女と目が合った。



少女が何か叫びそうになりながら身もだえだす。

ああ、やっぱりだ――――


「きゃーーーっ、可愛い!!!!!!萌えだーっっ」



突如叫ぶその少女の言葉に、
俺は目が丸くなるというのを実感した。


――――――――え?



産まれてから、といってもまだ三年程だが、

生きてきた中で言われた事のない台詞に、
聞き間違いかと、忍として発達している筈の耳を疑った。


しかし、少女はその叫びを皮切りに、

俺を見ては可愛いと言ってくる。

もえ?燃え?はよく分からないが、

愛くるしいだの可愛すぎるだのと言ってくるその言葉たち。


嘘かと思いたくとも、
その少女の態度と、瞳が本当の気持ちを言っていると訴えかけてくる。



「……やっぱ、その可愛さはもう芸術並みだわ・・・。」




一頻り叫んだ後に言ったその一言に、
既に真っ赤だったが、
身体中にその熱が行き渡った感覚を感じた。









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