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呑み込んで残留





霧野、
睫毛が揺れて、何とも言えぬ感情に胸を焦がす。灰色掛かった茶の瞳が二、三度の瞬きの後にすっと腕を伸ばす。
何も言わずに掌を合わせ絡めると少し頬を紅潮させ、そのままくいと引っ張られる。

抵抗も無しに寄り添うとするっと首に手を回されて抱き締められる。
何だか背徳的。
今に始まった事ではないが、やはり慣れない。好きとか嫌いとか単純な感情ではなくて、あぁ上手く言葉にならない。
愛しくて悔しくてもどかしくて後ろめたい、かな。どうも常識の壁というのは思っているより高くて厚くて厳しいらしい。


抱き締められて、感触に浸るこの行為も果たして常識的に許されるのか許されないのか。

俺と然程変わらない体格、ふわふわの髪、ほぼ同じ身長。どれもこれも言葉にすれば下らないけれど全部俺が好きなもの。

そっと体を離すと名残惜しそうに彼も絡めていた指を解く。

切なそうな顔するなよ、俺だってこんなの嫌だよ。好きなのに、愛しているのにこそこそしないと、隠さないと何も言えない何も出来ない。

でもそれは言えない。
俺もお前も、言ったって互いを傷つけるだけなの分かってるから。誰かの所為に出来るならしたいさ。

それすら出来ない優しさがお前にも俺にもあるから、こうして苦しむんだ。


「呑み込んで蓄めたこれを、吐き出せたらいいのにな」


呟くと、彼は一筋だけ涙を溢し、また俺の手を絡めとった。




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