イナGO | ナノ

※振られてる



先輩先輩っ!!
珍しく校舎内で一人で歩く先輩を見掛けた。つい声を掛けてしまった。
先輩はピンクのおさげをなびかせ、くるっと振り返る。あぁ美人だなぁ。

「狩屋、珍しいな」

校舎で会うなんて、俺が思っていた事をそのまま先輩に言われて嬉しくなる。

「先輩こそ珍しいですね」

お一人ですか?無邪気に聞く。先輩は顔色一つ変えずに今日は神童は休みなんだ、と答える。

他にも2年生は居るけど、どうやらクラスが違うので一緒ではないようだ。
でも先輩一人でもあんまり違和感ないですよ、ていうか先輩目立つから一人に見えるだけかもしれませんね。
実際キャプテンが居なくたって先輩の周りにはいつも人が居るじゃないですか。
俺、知ってるんですよ。
どっちかっていうと、霧野先輩が休んだらキャプテンが一人になるんじゃないですか?

まぁそんなこと、心優しい俺の口からはとてもとても。

先輩と世間話して終わり。
あ、でも今日キャプテン居ないなら、俺独占出来るじゃん。テンション上がってきた。




昼休みに2年の教室に行くと、やっぱり霧野先輩の周りには普通に人が居た。
部活の事で、とか言って呼び出せば普通に教室から出てきてくれた。


「俺、霧野先輩の事、好きです」
「そうか」

歩きながらナチュラルに告白してみたが、先輩は驚く様子が全くない。
いつも思うけど、喰えない人だ。告白慣れってやつ?まぁこんな顔じゃな。
前に一回だけ我慢出来ずに押し倒した事がある。事故を装って。押し倒せば隙が出来るし抵抗出来ないと思った。
ただ先輩は押し倒されてもきょとん顔で、目一杯押さえ付けたのに軽々と俺に捕まれたままの腕で起き上がった。
どんな怪力だ。そして隙なさすぎだろ。
別に先輩は怒ってなかった。
足捻ってないか心配された。
このお人好し。でも好き。

あの押し倒し事件があってから、俺はあの人をどうにか振り向かせたくて仕方ない。どうやったら手に入るのか考えたが良い案は浮かばず、結局直球作戦に出たわけだ。


「俺、本当に好きなんです」
「そんなことで呼び出したのか?」
「ダメですか?」
「うー…ん」

眉間に皺を寄せて困ったような顔をされた。あ、初めて見たかもその顔。
普段無表情な分何かしら反応があると嬉しくなる。


「先輩は俺の事、嫌いですか?」
「いや、好きだよ」
「じゃキスして下さいよ」
「後輩として好きだってことなんだけど」

ひどっ、俺は本気なのに。
俺にここまでされて好きだなんて言える先輩だから、俺も好きなんだけどさ。

「仕方ないなぁ…」
「キスしてくれますか?」
「アホか」


呆れながら先輩はぐいっと俺の腕を引いて抱き締めた。うお、力強いな…ってそこじゃないだろ自分、抱き締められてるぞおい。
頭一個分くらい違うから、先輩の顎が頭に乗っかっている。俺の後頭部を先輩が撫で撫でしているので若干擽ったい。

顔が紅潮しているのは自分でもわかる。まさか先輩が抱き締めてくれるなんて思ってなかったから嬉しさ10倍、マジ死んでもいい。

ちょ、先輩意外に身体しっかりしてるし…肌白いけど。ってかいつまでこの状態だよいや一生でもお願いします。


「…気持ちだけ、ありがとな」

ソプラノが聞こえて、あぁやっぱりな。
じゃあどうして抱き締めるんですか貴方は。
本当に好きな人だけ抱き締めれば良いのに貴方って人は。嫌な人。でも好き。




[ top ]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -