何考えてるの 「あ、」 突然の呟き。受け流したって構わない呟きだが、俺はそこにいち早く反応する。 「狩屋ー」 ほら来た、指名ありがとうございまーす。 「何ですか先輩っ」 俺を呼んだ綺麗な先輩の元へ急げば、心地好いソプラノの声が俺の真上から降ってくる。 「タオル、取ってきてくれないか?」 ベンチに置きっぱなしだった。 なんてうっかり屋な先輩、可愛いなぁ…ぽわぽわと考えながら、すぐに行ってきます!と猛ダッシュ。 先輩はあの綺麗な顔にあまり表情を付けないが、そこがクールで素敵だと思う。怒ったり泣いたりしても綺麗なんだろうけど。 ベンチに着くと何やらタオルがたくさん置いてあり、それぞれに名前まで書いてある。だっさ…、隅でちらっと思ったけどそんなことはどうでも良い。 先輩のタオルを探さなくては。 ベンチにほっぽってあるタオルを一枚一枚確認するが、先輩のが見当たらない。 確かにベンチに置いたと言っていたのに。誰かが間違えて持っていったのだろうか。 「どういう事だ…」 チッと舌打ちをするが、タオルが出てくる訳もなく、渋々先輩の元へ戻ることにした。 しょんぼりしながらとぼとぼグラウンドへ戻ると、先輩はキャプテンと何やら話し込んでいた。 あのキャプテン、幼なじみだか何だか知らないが何時も霧野先輩と一緒に居る。 あぁうざい。殴りたくなる。 イライラしている俺に追い討ちをかける様に、キャプテンはポケットから何か取り出して霧野先輩に渡す。 って、それタオルじゃん! 俺が探してた先輩のタオルじゃん。お前が持ってたのかよ。俺が任務遂行出来なかったのお前の所為じゃねぇか。 心の中で悪態を吐く。キャプテンはそのまま自分の練習場所へ戻り、首からタオルを下げた先輩はちらっと俺を見た。 あ、目…合った? うわ気まず…結局タオル持ってこれなかったのに…先輩表情変わらねぇから分からないですよ。 「狩屋、」 先輩にまた呼ばれ、逸らしていた目を先輩に戻すと、先輩はかなり近くまで来ていた。 「せんぱ…」 いや本当に近い。この短時間でここまで来たとか速すぎる、しかも近くで見ると更にイケメンだなこの人…美形でイケメンとか犯罪ですよ。 しっかし俺得すぎるだろこんな間近d… その時不意に先輩の手が俺の跳ねた髪の毛に触れて。あ、頭撫でられてる。一瞬鼻血が出そうになった。 「ありがとうな、タオル」 表情を変えずに先輩が言う。 この状態で先輩が笑ってたりしたら、多分本当に鼻血出るわ。 先輩が俺の横を通り抜けた後も、顔の熱が引かなくて、先輩の撫でた自分の髪をひたすらに弄っていた。 |