12/04 ( 06:34 )




深夜にベッドの軋む音がした。遠慮がちな音だったし、こんなことをする人物を私は一人しか知らない、からそのまま放っておく。

暫くして毛布が捲られて、もぞもぞと冷えた足先が私のふくらはぎ辺りにぶつかった。思わず声を出しそうになるくらい、冷たい足だった。

また不安になったのかな。怖い夢でも見たのかな。過去に押し潰されそうなのかな。

背中越しの華奢な細い体はやはりこちらに背を向けて丸まっていた。こういう時、どう対応すれば安心してくれるのだろう。柄にもなく迷ってしまう。

深い深い寝息が聞こえる。深海の呼吸みたいな、ゆっくりとした歌のようだ。

私の場所で寝られるなら、そっとしておいてあげたい。彼女が望むなら、私はそれだけの存在でも、たぶん、構わない。


「大丈夫だよ、きっと」


彼女の背を抱き締めて、私は再び微睡みの中に戻っていった。





結婚後押し隊




12/04 ( 00:27 )




目の前が暗かった。薄暗いと言えばいいだろうか。靄がかかったようによく見えないのだ。

一番最初に見えなくなったのは君の眼だった。その所為で君の眼の色も表情も分からなくなってしまった。私と君との間に出来た、絶対的な壁を、私はどうにも壊すことが出来なかった。

ただただ君との距離が遠くなってしまって、君の本心はもう掴めなくなってしまった。

そうしてとうとう君の姿を確認出来なくなると、私はこれ以上ないくらいに不安になった。君の声ばかりが繰り返し繰り返し聞こえて、誰も私を安心させてくれない。

これを苦行と言わずしてどうするか。

反芻する君の言葉に惑わされ、私は君を理解することが出来なくなった。そしてある日諦めた。

目の前の黒い塊を君だと過程するなら、きっと君の眼からも私は黒い塊にしか見えないのだろう。そうして誰も、他者を理解出来ないのだろう、認識出来ないのだろう。

ヒトはこんな暗くて黒い世界を見ているのだろう。私は考えるのを止めると静かに瞼を閉じた。やはり暗いままだった。



という夢を見たのさ。




12/03 ( 05:11 )




「あーいい匂い」
「理解出来ない」
「いいよしなくて」
「じゃあ離れてくれる?」
「それは無理」
「なんなのよむかつくわね」
「嗜好や善し悪しの分別差別は誰にでもあるから仕方ない。でも他人の行動に口出しするのは人権侵害だし互いに損しかしない」
「だから見逃せって?」
「これは性癖の問題だから、ほいほい直せるもんじゃない」
「ばっかみたい」
「いいよばかでも」
「損しかないのがわかってるなら最初から表面に出さなきゃいいのに」
「それでも、君相手に嘘は吐きたくないってことかな」
「そういうの要らないから」
「冷たいにゃー」




はいはい結婚しろ




12/03 ( 04:57 )




長い長い夢を見ていたような気がした。というのは嘘で、実際には一瞬だった。でも、一瞬だけのつもりで見ていた夢は、こちらでは一瞬ではなかったらしい。

「目が覚めたんだ」
「……」
「心配してたんだよ、あんまりにも反応ないから、死んでるんじゃないかって」
「……」
「おーい…聞いてる?」

今この瞬間初めましての知らない輩にそんなこと言われたって、えーまじかーなんて返せるわけがなかった。寧ろそんなのどんなコミュ力だ。

「ま、いーけどさ。落ち着いたら、自己紹介さしてね」
「……ん」
「あ、喋った」

喋るに決まってるでしょバカにしてんのこいつ。心で悪態を吐いてもそれを外に逃がしてやるほど自分は優しくない。と心得ているので聞かなかったことにした。

目の前の輩は嬉しそうに口角を上げて、ちんけな歌を口ずさみながらステップを踏んでいた。

こいつが異常な奴だと気付く一週間前の怠さで目覚めた一瞬の出来事だった。




(例えばこんな出会いだとして)




11/12 ( 23:45 )




「…幻滅する?」
「幻滅ってゆーか、うーん、きもいとは思う」

うわ失礼な奴。
とは言えなかった。というのは自分でもさすがに自分のしてることに引いたから。

「クラスの女子が知ったらどうなるかな」
「霧野君変態!」
「…ですよねー」
「……」
「世の女の子達ごめんなさい、俺は変態です!」
「声高々に言うな」

だったらどうすりゃいいんだよもう。変態に優しくない世間が悪いじゃんか。

「顔がいい奴ほど残念の法則か…」
「俺という変態を認めろよ!」
「無理乙」
「くらまあぁぁぁ!」


残念変態霧野君。
顔がいいのに彼女居ない奴は大概残念なんだよっていう。最近私の中の霧野君は遊んでるイメージ強い。
中世ヨーロッパ編後の吹っ切れ具合から推測して。ジャンヌさん似の女の子とっかえひっかえして神童さんに嫉妬されてやだな本命は神童に決まってんじゃんとか軽く言う霧野君書きたい描きたい。




prev | next
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -