夢の中、真っ白な世界に自分が浮いている。

剣城優一はそう思った。突拍子もないことだけれど、自分は今確実に地面に足を着いてはいないだろう、と思った。
周りには何も物は無く、不思議な空間に身体が浮いていた。
優一が辺りを見回していると、自分の後ろに誰かが立っている気配を感じる。振り向くと、眩く輝く光の中で誰かが立っていた。

「お前に似合いの花をやろう。せいぜい大切にするがいい」

鈴を転がしたような女性の声と凛とした男性の声が入り混じった不思議な声で、その人がそっと優一の前に立ち彼の頬に左手を添えた。それから右手で何かを掴み、そのまま躊躇なく優一の左目へ近づける。
すると、その何かは優一の瞳に吸い込まれて消えてしまった。痛みはない。

「さぁ、用は済んだ。もう帰ってもらうぞ」

パチン、と、その人が指を鳴らした瞬間優一の身体は黒い渦に呑みこまれ、次に目を開くと見慣れた天井があった。むくっと身体を起こし、左目を手で覆い隠す。特に変わったことはないようだ。強いて言うなら、微かに異物感はある。

「・・・なんだろう」

一人ポソッと呟き、首を捻った。





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