text | ナノ




「頼む」

また来たか。読書中のノベルから視線を外して、見慣れに見慣れまくった跳ね毛の茶髪を視認しながら店番中の戸倉ミサキは心中で呟いた。
視線の先に居るこの辺りの高校のブレザーを羽織った男は、数袋のパックを手に自分へと差し出していた。その一言で仕方なしにと腰を上げる羽目になるのだから、つくづく店番は厄介だと感じる。しかし顔には出さない。出してもさして問題のある人物ではないが。


普段店――カードキャピタルに足蹴に通う方では無い彼櫂トシキが、此処最近は如何した事か二日に一回程度の頻度で店を訪れるようになったのは記憶に新しい。
最初はご執心中(と一度ミサキが漏らしたら睨まれたのでそれっきりの呼び名だが)のあの子に会いに来ているのかと思っていたのだが、最近はあの子が居ようが居まいが、三和も連れずに一人でやって来ては、パックを数袋無造作に引いてレジを通し、カードを確認して帰っていくといったパターンを繰り返している。


(…こんな毎度毎度カード買い占めて、何が楽しいんだか)


この学生の何処にそんな財源があるのだろうかと疑いたくなる程に札しか出てこない質素な財布をちらりと見つつ、代金を受け取り品を渡す。櫂は大抵この場でこれ見よがしにパックを開け、中身を確認すると自身の使う「かげろう」クランのカードとそれ以外とを簡単に分け仕舞い、去っていく。今日もまた同じようになるのだろうとパターンを読み、再度安いパイプ椅子に腰かけ直そうと、


「おい、」


した所に、ついさっきまで口を噤んでいた櫂がミサキを呼んだ。まだ用があるのかと若干上目遣いに睨みつけつつ視線を櫂に向ければ、ずい、と差し出されるカード。
は?と思わず口にしてしまいそうになるが、言葉を呑み込んで此方へと向けられるカードを受け取る。自分のデッキには組み込まれていない、新弾の「オラクルシンクタンク」と書かれたクランのレアカードだった。


「アンタこれ…」

「偶々当たっただけだ。俺は使わないからな、他意は無い」


念を押すように口調を強めて言う櫂。こうも強く言われては、流石のミサキも言い返そうとも押し返そうとも思えなかった。渋々、といった風に受け取り本の間にでも適当に挟んでおく。扱いはややぞんざいだが、彼女が受け取った事に満足したのであろう櫂は何を言う事も無く店を出て行った。

今日は此処でデッキ調整していかないのかとか何故自分にカードを渡してきたのかとか、そもそも何で今頃になってカードを買い漁り始めたのかとか。
訊きたい事は沢山あったが、本人が居ないのでは考えても徒労に終わる事が目に見えている。呟きの代わりに溜め息を吐いて、栞代わりに挟んだカードを抜いた。


(…ま、別にいいか)




本心知らず

(あれ、ミサキさん新しいカード入れた?)
(ん、まぁ、ね……)



***
上げたカードはココちゃんとかだったり。

何か接点が欲しいけどツン!故に自分から行けなくて仕方なしにカードをあげようと思ったけど、オラシンは高レア率が半端ないので当たるまで買い続けてやっと出たレアをミサキさんに貢ぐ櫂君って需要ありますか(長)

高校生組可愛いよ\(^O^)/



×