text | ナノ



元日だというのに人の気配の少ない神社に見慣れなさを感じながら、ミサキは気温の下がらない寒空の下待ち惚けを食らっていた。
めかし込んだ女性がぽつんと一人境内の前に突っ立っているのも如何なものかと思いながらほう、と何度目かの白い溜め息を吐く。

手の冷えが気になってきた辺りで、漸く向かいの道から足音が聞こえてきた。別段急いでいる様子もない至って普通な歩幅のリズムにミサキの表情がむっと顰まる。


「遅い」

「すまない」


いつもと変わらず澄ました顔の櫂は淡々と言ってのけると、早く行くぞと未だ怒りの収まらないミサキを置いて神社へと進んでいく。

(デリカシーのない奴。もっと申し訳なさそうにするとか、ちょっと小走りで来るとか、そういうのできないんだろうか)押し黙ったままの口を開いて罵倒の一つでもと櫂を睨み付けた時に、彼の肩が僅かに上下しているのが視界に這入った。その原因がわからない彼女ではない、すぐに理由のイコールが繋がったミサキは開きかけた口をつぐんだ。当たりきれなかったもやもやに何だか一人相撲をしている気分になって、先を歩く櫂の背中を小さく小突いてやった。



安直なくらいの方が素敵よ

***
去年は人混みのお話だったので、今年はがらがら。巫女さん達ににやにやされながらのお参りになりそう。

遅いし短いですが今年もよろしくお願い致します。


title:象徴主義
130115
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