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▼ 1期のクロノvs伊吹後(VGG)
「ハーイ。イブキ……でいいんだよね?」
新導クロノとのファイトを終え、腰を抜かした奴への賞賛に混じるつもりのない俺に、そいつは軽々しく声をかけてきた。ハイメ・アルカラス。かつての伝説のクランであるアクアフォースを使う、ユーロリーグの新進気鋭。この時期はリーグ戦もなく実質オフシーズンのようなものだ、大方日本へは観光ぐらいの感覚で来ているのだろう。新導クロノを甚く気に入っているのだとかと話も聞くが、実際は定かではない。
「頼まれ事を引き受けてもらった礼がまだだったな」 「そんなの気にしてないよー。強いて言うなら、君が髪の長いヤマトナデシコじゃなかったことが残念ってぐらいかな」
そういえば、こいつは俺が声をかけるまで老若問わず女にアプローチしまくっていたことを思い出す。女好きの噂は嘘ではないらしい。こう見ると、同じクランの使い手である蒼龍レオンとは真逆と言っていいぐらいだ。
「さっきの、どっちも譲らない、いいファイトだったよ。オレもハートが震えっぱなしさ」 「ユーロリーグに出場するようなファイターにそう言われるとは光栄だな」 「絶対そんなこと思ってないくせにー」 「そんなことはないが」 「肩書きとか賞賛とか、そういうのに興味なさそうな顔してるよ」
鼻先に指を突き付けられ押し黙る。見下げた先のハイメ・アルカラスはにんまりと、無邪気さのない笑みを浮かべていた。流石というか、この歳で世界に名を轟かせているだけはある。少なくとも、ファイトの腕と、目は確かなようだ。
2017/07/13
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