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▼ フリーが辞めた後くらい(ベイバ)
「クミチョーはやめたりしないよな……?」
いつになく不安げな表情のバルトに、クミチョーは一瞬虚を突かれたような気持ちになって、それからそんなバルトを鼻で笑った。
「あったりめぇだろ! ここでやめたら何のために海外くんだりまで来たかわかんねぇっての」
眉を下げたバルトの頭をぐりぐりと撫で付けてやれば、すぐにいつもみたいな高い声で抗議が飛んでくる。馬鹿みたいに笑ってなきゃバルトらしくねぇな、なんて、絶対本人には言ってやらない。
「うわっ!」 「へっ、んなへにょへにょしてるヒマがあったらベイ構えてろ!」 「んなっ、へにょへにょって何だよー!」 「へにょへにょはへにょへにょだっつーの!」
ぷふふ、とバルトをからかいながら部屋を出ていく。程なくして室内からうがーっ! と形容しがたい雄叫びが聞こえたので、バルトが自分を追い掛けてくるのも時間の問題だろう。単純で真っ直ぐなくせに、色々気負いすぎてへなちょこなバルトなんてバルトじゃないのだ。馬鹿みたいにベイが好きで猪突猛進なぐらいが丁度いい。そんな彼だからこそ、いい友人でありライバルであるのだから。
「……ま、気負いすぎてんのはオレもなんだろうけど」
自分だって突然の昇格に驚かないわけがないし、周りの視線や圧力に疎いわけでもない。それでも、此処でやっていかなくてはいけない。 決意を新たにしたクミチョーが、物凄い剣幕で自分を追い掛けてくるバルトを相手に必死の鬼ごっこを始めるのは、あと十秒も経たないうちのことである。
2017/07/10
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