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余所に遜色ないいいチームだったと思う(BFT)






「ネメシス、もう行っちまうんだろ?」

アイバの呟きに、ルーカスは返事を濁すことなく頷いてみせた。実際は今すぐに、というわけではないが、日本を旅立つ支度はもう始めている。あと一週間もしないうちに、自分は此処を発つ。
そっか、と零したのはどちらだろうか。両隣から聞こえた気がする。急拵えの、しかも上から目線で選んだチームだというのに、二人とも思った以上に自分と噛み合ったものだと思う。出番を与えたからとはいえ、場面が場面だったものだから、もっと疎まれたりする――それこそ負けたときにはこっぴどく暴言を吐かれる――とさえ考えていた。しかし、二人はルーカスを責めるより先に己の腑甲斐なさを責め、よくやってくれたと立つ瀬がないのにも関わらず感謝した自分に、悔しそうながらも笑ってみせたのだ。

「もうちょっと時間があったら、もっと上手くやってやれたかもしんないよなぁ」
「過ぎたことを言っても仕方ねぇが、それはあるかもしんねぇな」
「そういう点に関しちゃ怒るぜルーカス。俺たちのこと、もっと早く見つけてくれたらよかったのに、ってさ」

トミタの言葉にあるのは怒りではなく、単純な悲観と願望だった。例えば、ルーカスがメンバー表にもう少しだけ早く目を通していたら? 留学前に事前にデータが渡されていたら? 生まれるもしもの数だけ未来があって、勿論その中にはアイバやトミタがルーカスとチームを組むことのない未来もあっただろう。急拵え、リーダー一辺倒のチーム。寄せ集めみたいな三人だというのに、この時が続けばいいと、願わずにはいられないのだ。

「運命の糸に繋がってる相手なんて、そう簡単に見つからないってことだよ」
「まーた気障ったらしい返しかよ!」




2017/05/19


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