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学び続ける(MHA)






 雄英高校は広い。敷地や校舎、行うイベントの規模は勿論だが、設置された設備も広大である。それは例えば食堂であったり、各クラスの教室であったり、――図書室も、そのひとつである。
 体育祭前だからか、訪れる人影が普段より少ないことを意識しながら、八百万はいつものように事典の集まるコーナーへと静かに歩を進めた。変わらず司書の教師がいる他は、生徒が疎らに点在しているぐらいである。ヒーロー科で見かける顔ではないので、きっと普通科か経営科の生徒だろう。尤も、余程のことがない限り普通科が此処でのんびりと新刊を眺めていたりはしないだろうから、どちらかといえば体育祭においてフリーな時間の多い経営科の確率が高い。そのどちらでもない、所謂花形であるところのヒーロー科の八百万は、中でも更に少数であろう“余程のこと”のために、この数日図書室へ通い詰めていた。
 初見だと判断した蔵書を片っ端から抱え、陣取った席にどんどん積み上げていく。人一人分の座高を越した山が二つ三つとできた辺りで八百万は漸く席に着き、天辺の事典を手に取って、一心不乱に読み耽り始めた。
必要なのは知識。簡単な造形(ディテール)があれば尚よし。ぱらぱらと速読スピードで捲りつつ、気になった箇所は目を留めノートに書き写す作業はまるでテスト前の追い込まれた学生さながらだ。丁寧に書き取り考察されたノートには、物質の名称から構造、必要になる素材と割合まで、ひとつの対象を創造るために欠かせない情報がびっしりと書き込まれている。書き写すだけならまだ誰にもできようが、八百万はこの情報を自身の頭に叩き込むのだから、常人には舌を巻く行為だ。しかしそこを潤沢にしていなければ、彼女の個性は只の持ち腐れと化してしまう。歩みを止めたら其処で終わってしまう自身の個性を生かし続けるために、八百万は必死だった。





っていう流れからの推薦組を書くつもりだった。




2016/11/29


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