SSS | ナノ

みかおる詰め(鉄血)






基本的に三日オル(ミカオル)
三日月・オルガ>ビスケット>>その他ぐらいの出番
細かいことを気にしてはいけない
だんだんふざけはじめる



「お前は重たいもんばっか持ってるからちっせぇままなんだよ」
何の根拠もない言葉と共に半分以上かっ攫われてくダンボール。開けた視界の先のその背中をむっと睨めば、まるで後ろに目があるんじゃないかってぐらいすぐに気付いた振り向きざまの横顔がニヤニヤ笑うもんだから、俺はますます眉を顰める。そのちっさい奴に毎度組み敷かれてるのは誰なんだか、今此処で叫んだっていいんだぞ。




俺たちは歯車で替えのきく部品だ。きっとそれ以下かもしれねぇ。上が欲しいのは従順に頭を垂れる犬。どうせ犬なら、寝首でもかっ喰らえる狼でいたい。




オルガは俺たちの隊長。だから責任を負えと命じられれば頭を下げるし、不祥事の原因全部を押しつけられて殴られることなんて茶飯事だ。
いつか、こいつの鎚矛を此処の汚い大人に叩き落としてやりたいと暴れ狂う感情に蓋をして、今はイカした顔になったあいつを笑ってやる。




周りの誰も知らないときからずっと一緒で、どんな関係かっていうのが難しいぐらいには一番近くに居た。俺が前線でオルガが司令塔、この構図もずっと変わらない。どこに行こうと居場所が変わろうと、隣で肩を並べる人間が変わらなければ、案外苦じゃないらしい。




「あいたっ」小さな悲鳴に視線を向けると、オルガがビスケットの肩を叩いていた。また何か頼んだんだろう。俺と拳を突き合わせるとき、オルガは俺を見ないことの方が多い。目線が合わないことを僻む気はない。俺たちが繋がってるのはそこじゃないんだ。




ビスケット、助けてくれ。最近妙にミカが離れねぇんだ。文字通りだよ、雛みてぇなときもあるしマジでまとわりついてるときもある。飯食ってたり作戦会議してるときはまだ構わねぇんだが、風呂だの何だの、寝床にまで引っ付いてきやがるもんで暑くてしょうがねぇ。拳骨落としてやったけど効果なしだ。他の奴らも茶化してくるしよ……
あ? 原因も理由も俺が知りたいぐらいだっての。……あぁ、そういや丁度一軍のお偉方に転がされた後ぐらいからだったか。人の身体見てニタニタしてんだから気持ちわりぃったらありゃしねぇ。まだぶん殴られた方がマシだったぜ。
……理由わかったのか? は、そのままにしとけ、って何でだよ。わかってんなら遠い目してねぇで何とかしてくれって。おいビスケット!!




「三日月さんかっこいいですよね!」「そうだなぁ」
「今日も訓練でトップでしたし!」「そうだなぁ」
「筋トレとか、自主鍛練も怠らなくって!」「そうだなぁ」
「しかもそれを他人に見せつけないストイックさ!」「そうだなぁ」
「ちょっとオルガさん、さっきからそうだなぁばっかですけどちゃんと聞いてますか!?」
「あ? 聞いてる聞いてる。ミカがかっこよくて腕もよくて寡黙な努力家だってんだろ?」
「そうです、そうです!!」

「…………」
「ちょっと三日月、口噛んで表情殺すのやめなって」
「だってオルガが俺を褒めてる」
「(タカキの話を聞くのが面倒で丸め込んだだけなんじゃないかっていうのは言わないでおこう)」




今日の参番組の待機時間での暇潰しは腕相撲だ。やいのやいの、日頃の鬱憤と鍛練の成果を見せ付けるように男二人が腕を組み合う光景は、俺たちぐらいの年頃なら普通なのかもしれない。

「オルガァ! お前も混ざれ!」

喧騒の中、誰かもわからない野次に、珍しく一歩引いて観戦の体勢をとっていたオルガは、仕方ないというように肩を回しながらその輪に加わろうとした。加わろうとして、三日月に脇腹を殴られて蹲った。

「い、……ってぇ! おいミカ何すんだ!」
「オルガは怪我してるから、今回はパス」

たった今しがた君が殴ったせいで怪我が増えたんじゃ、なんて野暮なことは誰も言わない、いや言えない。一瞬白けた場だったけど、ユージンが取り繕うように発破をかければ、すぐに活気が戻ってくる。短気なユージンですら場の空気を読む術を身につけているのは、ひとえにこのオルガ防衛隊員のせいだろう。

「あ、昭弘が暇そうにしてるから、誘うならそっちにしなよ」

こうしてさらりと仲間を売るのも、またいつものことである。

(一軍の皆様方に殴られて肩を痛めたオルガを出撃させない三日月の愛あるパンチとお見通しなビスケット)




2015/10/15