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Vこと(ygo)







ミハエルと小鳥(没ネタ)





柔らかそうだなぁ、と隣でケーキを頬張る小鳥さんを見ながら考えて、慌てて揺るみきった頬と頭の螺旋を締め直した。幸い生クリームと格闘中らしい彼女にはだらしのない顔を見られずに済んだみたいだ。


「美味しいかな?」

「とっても!ミハエル君の用意してくれるお菓子にハズレはないわ」

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいな」


フォークを片手に微笑む小鳥さんのなんて可愛らしいことか。前日からお店の吟味に時間をかけた甲斐があった。やっぱり自分の選んだもので喜んでもらえるのは自分自身のことみたいに嬉しい。それは兄様や父様達にも言えたことだけれど、小鳥さんは家族じゃない。だから、僕にとって家族以外で喜んでもらえた経験があるのは遊馬と彼女ぐらいだった。ましてや女の子相手にというなら、尚更な話。


「本当に僕の部屋でよかったの?他にもいっぱい楽しい所はあるのに…」

「うーん、ミハエル君が居てくれるなら私はそれでいいの。寧ろ私が我が儘言っちゃってごめんなさい」

「そんなことないよ!」


思いきり立ち上がって叫んでしまった。ぱちくりと目を瞬かせる小鳥さんにああやってしまった、と理解した瞬間ぶわわっと顔が熱くなる。小鳥さんが来たことに怒ってるなんてあるわけないし、迷惑だなんてもっての他だ。逆に嬉し過ぎて感情のコントロールが利かなくて困ってる。紳士的な振る舞いなんて、彼女の前では簡単に鳴りを潜めてしまう。


「お腹いっぱい、ご馳走様。ミハエル君の淹れてくれた紅茶もとっても美味しかったわ」

「気に入ってもらえてよかった」

「こんなに食べたり飲んだりしてたら太っちゃう……」

「大袈裟だなぁ。僕は気にしないよ」


寧ろ抱き締めた時の心地がよくていいかもね、なんて冗談めいて言ったらちょっとむくれてそっぽを向かれた。嘘じゃないのになぁ。試しに肩を引き寄せてみた。容易く傾いだ身体はぽふっと僕の腕の中に倒れ込んで。擦った髪の毛の気取らない香りに一瞬どきりと心臓を掴まれる。












ナチュラルセクハラミハエル氏。
V君と呼び方悩んで結局こっちに。




2013/12/03