※カウントスリー10話後
1万打記念 和泉さまリクエスト





さてどうしたものか。


「…………。」


現在、俺は一体この、恋なんかとはまた違う気のする未知の感情と、どう向き合うべきか悩んでいる。割と真剣に。



それは購買で適当にパンを買ってから、教室へ戻る途中のことだった。賑やかな廊下を歩きながらふと窓の外に目をやると、そこには原さんが友人と二人で一緒にいた。どうやら今日は外で食べるようだ。そういえば朝そんな話をした気がする、と思いながらなんとなく足を止めた。二人は適当な場所を見つけると、軽口をたたいているらしくけらけらと楽しそうに笑いながら、シートを敷いた。
どうやら友人の方は何か用があるらしく、原さんに声をかけ小走りでそこを離れた。原さんははーいと返事をし、その場に座る。そしてじっと空を見上げた。別にそんなことはないのかもしれないけれど、原さんはすこし寂しそうな横顔をしているように見えた。
ーー暇だし声でもかけてみようか。そう思い立ち外へ出る扉のほうへ歩きだそうとすると、そこで突然予想外の奴が登場した。


「日向…?!」


ぴょーん、という効果音がぴったり合いそうな登場の仕方をした日向は、たったったっと原さんの方へ駆け寄り、シートに座る原さんのそばにしゃがみ込む。原さんはというと、驚きつつも嬉しそうに笑った。日向だ、と言ったのがわかった。
なんとなく出づらくなってそこでまた立ち止まる。しかしこのまま立ち去るのもなんだか癪だったので、俺はそのまま廊下の窓から二人をしばらく眺めることにした。


日向と原さんが同中だったことはもちろん知っている。
二人が普通よりちょっとだけ仲が良いのも、原さんがたまに日向と話をすることを楽しみにしてるのも、知っている。けれど。


「…………。」


二人は、何やらさっきから、やたらと楽しそうに話をしていた。友人はまだ戻ってくる様子がない。
いや、日向のコミュニケーション能力の高さは俺もよく知っているから、きっとあれは特別仲が良いとかそういうことではないのはわかっている。
わかってはいるけれど。
なんと表現すればいいのかさっぱりわからない、理由のない腹立たしさが俺を襲っていた。なんだこれ、と思うが窓の外のあの二人を見ていて生まれた感情だということだけはわかる。つまり多分これは、最近自覚した原さんへの気持ちに関わる何かだ。きっと恋愛感情があるがゆえのもの。
そこまでわかっていながら、このときの俺には自分がなぜ腹を立てているのかさっぱりわからなかった。

ーーーなんでそんな楽しそうなんだよ。

いつもの、あの俺と交わす会話で笑うときの感じとはまた違う、原さんの笑顔。あまり知らない気楽な表情の原さんを見て、ちょっとだけ日向が羨ましいとすら思った。…それが腹立たしさに変わる意味はわからないままだったが。
まさか日向が羨ましくなるとは、と考え込んでいると、いつのまにか目の前に日向がいた。


「っ??!」
「影山?どーしたんだよお前、呼んでも全然返事しなかったな」
「お、お前さっきまで、外に」
「は?…あ、見てたのか?そーいや見えるなここから」


日向と同じように外を見ると、原さんは戻ってきた友人と一緒にもうご飯を食べ始めていた。…そうか、だから日向が校舎の中へ入ってきたのか。合点がいきまたなんとなく原さんの様子を見ていると、ふと、何やらにやにや笑いながら俺を見る日向と目があった。


「そうか影山くん…ここから原さんをみていたのか…ふぅぅん…」
「!?んなわけねーだろボゲが!」
「怪しいとは思っていたけどなぁ…こないだのこともあるしなぁ…」
「あぁ?!っせーなその顔ヤメロ!!」
「おわぁ?!ややややめろって痛ぇぇぇっ」


日向の頭を掴む力が普段よりも少々強すぎたかもしれない、という自覚はあった。しかし涙目で頭をさする日向が、そのときは何やらむかついて仕方なかった。




「日向に会ったよー、相変わらずだった!」


予想していた通り原さんは、教室に戻るなり俺にそう言った。知ってる、とは言えずにへえ、と言うと、原さんは楽しそうに笑いながら話を続ける。


「秋がトイレ行っちゃって、私が一人になったところでちょうど話しかけてきてね。なんか寂しそうに見えたーとか言われてさ」


よくわかんないけど優しいよね日向、と楽しそうに笑う原さんに、ちょっとだけむかっとした。でもその顔を見ていたらなんだかいろいろ考えてるのがあほらしくなって、はあとため息をついた。


「原さんて変な人だな」
「えっ何、なんで」
「なんとなく」


笑った顔みてたらなんかいろいろどうでもよくなった、…とはさすがに言えない。思い浮かんでしまったそのセリフに若干恥ずかしくなって、誤魔化すようにヨーグルを飲み干した。





sigh



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title:kara no kiss
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