次の授業は音楽、移動教室だ。予鈴はもう鳴ってしまった。秋と一緒にぱたぱたと走り音楽室に向かう途中、私はあることに気づいた。


「っ…忘れ物したかも」
「はぁ?!
え、ちょ、怒られるよ、あのハゲ忘れ物うるさいじゃん」
「いや多分教室に…」


ちょっと戻る!すぐ戻るからなんか言い訳してて!と叫んで、りょうかーいっと叫び返す秋の声を聞きながら、私はすぐもと来た道を引き返した。







…で、戻ってきたわけだけれど。

(ほんとよく寝る…)

昨日の朝(私の中で)実はいい人疑惑の生まれた影山くん、先程休み時間に見たときと変わらず、依然として爆睡である。もういっそ清々しいくらい。ちょっと笑いそうになるのをこらえて、本来の目的を思い出し自分の席へ向かう。探していたモノはすぐに見つかった。合唱の練習に使う楽譜。

ーーーていうか、結局誰も起こさなかったんだ。

さっき教室を飛び出す直前、影山くんがまだ寝てるかもなーとは思ったけれど、誰かが起こしてくれることを期待してそのまま突っ走ってしまったのだ。
まぁ寝起きの影山くんは怖そうだし、声かけるの躊躇うかもなぁ。うん。そう納得して、でもすこし好奇心が生まれた。…影山くんの寝顔ってどんなだろ。いやほら、昨日助けて(?)もらったし、このままにはできないし…。本鈴が鳴ってしまったのにも気づかなかった。
そっと近づき、影山くんが突っ伏して寝ているために寝顔が見られないことをちょっと残念に思ったりもしながら、声をかけてみた。


「…影山くん、起きてー…ください」

「か、影山くん。授業はじまりますよ」

「お、おはよ…?」
「………ぐ」
「ぐ?!」


むく。突然起き上がり、目を瞑ったままじっとして、またゆらりと揺れて前に倒れそうになる影山くんの頭を、咄嗟に持っていた教科書で支える。


「あ」
「………ども」


何がどもなのか、この頭教科書で前からおさえて支えられてる状態でどもって言える影山くんが謎すぎて、慌てて教科書を引っ込める。するとめちゃめちゃ不機嫌そうな顔の影山くんが現れた。


「…えーと。お、おはよう」
「………してぇ」
「え?」
「バレーしてぇ…はやく部活行きてぇ…………………………………………っす」

「…ぶはっ」


前半寝ぼけてたみたいだけど、後半目が覚めたのか思い出したように、っす、と付け足した影山くんに、思わず私は吹き出した。
決まり悪いのかふいっと視線をずらして、若干頬を染めているように見える影山くん。なんだか胸がどきりと高鳴ったのがわかった。何そのカオ、と言いたくなる。

…これがギャップというやつだ。多分。どこか冷静にそう分析しながらも、私の心臓の拍動は加速するのをやめない。なんだろう、私もしかしたら。もしかしたら…。


強襲メルトダウン



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title:kara no kiss
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