ぱか、とケータイを開けば画面には、新着メール一件、と表示されていた。開封。


[影山くんと日向の速攻って、日向が目を瞑るの…?!空振りとかしちゃわない!!?]


ごろんとベッドに転がるようにして倒れこみ、じっとそのメールを眺める。内容は、バレーについてとはいえ特になんてことはないもの。しかしそのメールの相手はなんと原さんである。…さてなんて返そう。
俺や日向のポジションについてちょっとだけ話してみて以来、原さんは面白そうにバレーについての話を聞いてくれる。そこですこし俺と日向の速攻について説明してみたのだ。

そこで何気なく履歴を見れば、原さんとは一日に数通程度だがやりとりが続いている。どこかくすぐったい感じがした。
ここ最近ゆっくりと降り積もるようにして増している期待。それがまた淡く積もる。
二週間前のあの日、俺が思わず言いかけた言葉はきっと、原さんには気づかれていると思う。…てかあれ、あそこまで言ってしまったらもう誰でも気づくんじゃないだろうか。それなのに原さんはこうして俺と普通にメールを交わすようになって、朝教室に入れば隣の席ではないことなど関係なく挨拶してきて。時折そばへやって来ては相変わらず楽しそうに笑って俺と話をする。
そしてあの日の午前中、俺が起きた瞬間までの、俺に向けられていた原さんの眼差しがやたらと優しいものだったから、もしかしたら、と考えてしまったのをことあるごとに思い出す。
もしかしたら。俺と同じような気持ちでいてくれているのではないかと。


「…はあ」


乙女か。
そう自分の頭の中のふわふわごちゃごちゃしたものを一蹴した。返信途中のケータイをぽんと置き、寝転がったままそばにあるバレーボールに手を伸ばす。ぐっと力を込めてみるもその形はあまり変わらない。
ボールを両手で掴んだまま起き上がったところで、突然ケータイから着信音が鳴り響いた。また表示された新着メール一件の文字。
開けて見れば川衛からのメールだった。


[ちょっと飛雄わたし、そんなこと知らなかった!なんで言ってくれなかったの?それじゃあわたしただのバカじゃない…!]


よくわからない内容のメールに、俺は首を傾げた。たぶんこれは昨日のメールへの返信だ。なぜか川衛は原さんを俺の彼女と誤解していたのである。んなわけねーだろという俺のメールに対して、このように返してきた。
…ただのバカってどーいうことだ?そしてなんでちょっと怒ってんだ?
もう一度首を傾げて考えてみたもののわかるはずもなく、勘違いしてた自分がバカみたいとかそういうことだろと考えるのを諦め、またベッドに倒れる。


飛雄の彼女って、という昨晩の川衛のメールの文面がふと頭をよぎった。


「…原さんと付き合う、なぁ」


ぽつりと呟いてから、しばらく動かずじっと天井を眺めていた。


「っし、」


バッとそばにあるケータイを手に取る。先ほどの原さんからのメールを開いた。少しだけ鼓動が早まるのが自分でわかった。ーーーふと、あることを思いついたのだ。

期待するだのなんだのとうだうだしてる暇があったら、何か行動したほうがずっといい気がして。俺の気持ちに気づかれたならそれでもいい、なんて半ばヤケで思う。どうせ諦めることも出来ないのだから、ちゃんと向き合ってどうにかしたほうがいい。1度うまくいかなかったからといってもう1度試みようとしないのは馬鹿げている…というかあれは正確にいうと失敗でも成功でもないし。
淡い期待に身を委ねているだけではだめだ。そんな唐突にうまれた考えに少しだけおどろきながら、勢いよくカチカチと文章を打ち終えた。しばらく躊躇ったものの、ひとつ深呼吸をして、送信ボタンを押す。


[今度、試合見にくるか?]


見たほうが早いだろ、と今更言い訳するように呟いて、パタンとケータイを閉じた。



その胸の温度をしりたい



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title:kara no kiss
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