「トリックオアトリート!」
「……」
「トリックオアトリート!」
「……」
「遊夜ちゃんお菓子持ってる?持ってないよね?」
「……」
「持ってないよね!悪戯していい?」
「……う ざ い」
朝っぱらからうるさい御幸に一瞥した目線を送ってから、ポケットをごそごそとさぐるあたし。
探していたものをみつけて、それを御幸の顔面にべしっと投げつける。
「痛い!遊夜ちゃん!」
「それあげる」
「これ?」
「だから悪戯しないでね」
うー、さむ、と言いながらマフラーを巻き直して歩き出す。
「…ちょ、遊夜ちゃん待って!」
「待たない」
「これ、ありがとね」
「…ただの市販だよ」
「あれ?照れてる?」
「…うるさい」
「かーわいい」
「ついてくんな馬鹿眼鏡」
冷たいなー、と御幸はあたしのあげた物のパッケージをピリピリ破いて、中身を口に放り込む。
「…酸っぱ!」
「良かったね」
「今の遊夜ちゃんにピッタリ」
「は?」
「食べる?」
御幸は口をあけて、舌を出した。
「…バカ!」
「照れてるー!かわいーい」
ニヤニヤする御幸を置いて、あたしはスタスタと歩き出す。
寒いのに、顔が熱いなんて気のせい。
ドキドキするなんてもっと気のせい。
レモンキャンディー
(遊夜ちゃん、ありがとね)
(うん)
(今度は俺が何かあげるから)
(うん)
(ねぇ、付き合って?)
(……いや)
(ちぇー)