どこにいるの、亮介くん。


三年生の廊下を走り回り、教室を覗く。
周りからの視線が痛い。

でもそんなこと気にしてられない。
今すぐ会いたい。


普段から運動をしないあたしの体力はもう限界で、足がガクガクと震えていた。


「お前、倉持と御幸の知り合いの、、」

「えっ、、」


三年B組の教室を覗くと、窓際に座っている少しガラの悪そうな先輩があたしに声をかけた。


「もしかして野球部の、、?」

「あぁ俺ァ伊佐敷っつーもんけどよ、二年がこんな所きて何してんだ?」

「りょ、小湊先輩を探してまして、、」

「あぁ!?亮介ぇ!?」


伊佐敷先輩はギョッとした顔をして、あたしの顔を見た。


「ほーう、お前が、、、」

「な、何ですか、、」


打って変わって、にやっとする。その悪そうな笑顔が怖い。

野球部って、変な人ばっかりだなあ、、


「亮介なら喉乾いたっつってどっか行ったぜ!自販機じゃねーの?」

「あ、ありがとうございます!」


聞いてもないのに、亮介くんの行き先を教えてくれた。この人もしかして、あたしの気持ちに気付いてる?


「頑張れよ」

「……っはい!」


確実に気付いてる。火照る顔を押さえて、あたしは教室を飛び出した。

みんな応援してくれる。野球部は変な人ばっかりだけど、良い人ばっかりだ。



階段を駆け下りて、野球部のグラウンド近く、、亮介くんと初めて会った自販機の前。


その場所に、亮介くんはいた。


「…遊夜ちゃん?」

「亮介くん!!」


やっと見つけた。

安心したあたしは、ペタリとその場に思わず座り込んだ。


「こんな息切らして、どうしたの」


亮介くんはあたしの前に同じようにしゃがんだ。

目の前に亮介くんがいる、そう思ったら泣きそうになる。


「はい、遊夜ちゃんにプレゼント」


亮介くんがニコッと笑って差し出したのは


「ミルクティー、、」

「好きでしょ?」

「亮介くん、好きじゃないんじゃ、、」

「間違って買っちゃって、どうしようかと思ってたらちょうどいいところに遊夜ちゃんが」

「ありがとう、ございます、、」

「っていうのは嘘」


驚いて思わず顔をあげると、亮介くんと目があった。


「遊夜ちゃんのこと考えてて、気付いたらこれにしてた」

「りょ、、、」

「俺、先輩失格だね」


ドクドクと、亮介くんの言葉一つ一つに、あたしの鼓動は速くなる。

今まで見たことない亮介くんがここにいる。


「倉持と遊夜ちゃんのこと応援しなきゃならないの分かってるんだけど」


悲しそうに笑わないでほしくて、気持ちを伝えたくて、あたしは思わず抱きついた。

ほんの一瞬だけ、亮介くんの肩がビクリとしたのが分かった。


「遊夜ちゃん、離れて」

「離れません、、」

「もう分かってるから」

「分かってない!」

「遊夜ちゃ、、」

「あたしが好きなのは倉持じゃないです!」


しがみついたまま叫ぶ。何故だか、涙が滲んできた。

亮介くんがあたしの顔を覗き込む。


「あたしは、」



逸る鼓動が、止まるかと思った。

気付いたら、亮介くんの唇が、あたしの唇を塞いでいた。



「りょ、、」

「一度しか言わないからよく聞いて」


唇が離れると、亮介くんに強く強く抱きしめられる。




「遊夜ちゃんが好きだよ」





時が、とまるかと思った。




「あたしも、、亮介くんのこと、大好き、、です、」




また目があって、思わず笑ってしまって、どちらからともなくしたキスは

ミルクティーのように甘く。











































(今頃亮さんと遊夜、うまくいってんのかな〜)
(……だな)
(はっはっは、へこんでるな)
(うっせー御幸!亮さんとか相手悪すぎんだよ!)
(ま、元気だせよ)
(お前もな)
(…何が)
(俺が気付いてねーとでも思ってたのか)
(…俺らは引退するまで野球が恋人だな)
















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