御幸が背中を押してくれた。だから余計に引き下がれない。
廊下を走り回り、倉持を探す。風邪はもう治って学校には来るみたいだけど、まだ教室にはいなかった。
待ってられない。
今すぐ倉持に伝えなきゃ。
「あ…っ」
見つけた。
窓越しに、倉持が外の通路を歩いているのが見える。
「倉持!!」
「…遊夜?」
下に降りるのも焦れったく、三階の窓から身を乗り出してあたしは下に向かって叫んだ。
倉持はびっくりした顔で見上げて来る。
「倉持、ごめん!あたし好きな人がいるの!だから、ごめん!」
人目も憚らなかった。ただ、今すぐ倉持に伝えたかった。
本気でぶつかってくれた倉持に、あたしも本気で返したかった。
「でも、ありがとう!好きになってくれて、ありがと!!」
涙が出そうだった。目頭が熱くなった。
でも堪えた。
ここであたしが泣いたらいけない。泣きたいのはあたしじゃない。
「…遊夜!」
「なに!?」
「幸せになれよ!」
「…っうん!」
我慢してた涙が零れ落ちた。
その姿を倉持に見せないように、あたしはまた廊下を走り出す。
倉持、ありがとう。
あんたほんと良い男だよ。
だけど、どうしてもあたしはあの人じゃなきゃだめなの。
もう遅いかもしれない。
嫌われたかもしれない。
倉持との関係を応援するなんて言われちゃって、きっとあたしのことなんて何とも思っちゃいない。
それでもあたしは、この気持ちを今からあなたに伝えに行きます。