「おい」
「……」
「おいって!お前!」
「…えっ」
急に誰かに腕を引っ張られて、あたしは足をとめた。
「お前ちゃんと前見て歩いてんのかよ!死ぬぞ!」
あたしの腕を掴んでいたのは少しやんちゃそうな男の子で、全く知らない人。
指差された方向を見てみると、そこにあった信号は赤だった。
「…あ、すいません」
「ったく、危ねーな」
「ありがとう…あれ?」
「何だよ」
「その制服、中学同じだ」
「あぁ、俺一年」
「一年?見えない」
「うっせーよ、お前は?」
「あたしも一年」
「タメじゃねーか」
「だねー」
「興味なしか」
「だねー」
「…自分から聞いたくせによ」
「拗ねないでよ」
「拗ねてねーよ!」
「…ふ、冗談よ、顔赤い」
思わず笑うと、男の子は不本意そうな顔をした。
「…お前、名前は」
「椎名遊夜、そっちは?」
「…倉持洋一」
「ふーん、倉持ね」
「呼び捨てかよ」
「だって君、くん付けされるガラに見えないけど」
「何じゃそれ悪口か?」
「褒めたつもり」
「…お前おもしれーな」
「…ありがと、って言うべき?」
「そうなんじゃねーの」
「ふーん」
「…何笑ってんだよ」
「別に?」
倉持洋一か。
なんか、面白い奴に会っちゃったな。
「「あ、青」」
信号の色が変わったのを合図に、あたしと倉持の声が重なった。
「……」
「…真似しないでよ」
「お前が真似したんじゃねーの」
「してないわよ」
「じゃあ俺もしてねーよ」
「…ふ、変な奴」
「ヒャハ!お前もな」
そのままあたしと倉持は隣に並んだまま、止めていた足を二人して進めた。
もう一度君と出会わせて
最初からやり直して
今ならきっとうまくやれるよ
君は私にまた声をかけるの