「え……倉持、今なんて言ったの?」
雪が降っていた。
手袋なしでは指先も悴んでしまう、そろそろ本格的に進路を決めるシーズン。
「だから、俺青道いくんだよ」
「なんで」
「野球してーから」
「や、野球部が強い学校なんか地元にもいっぱいあるじゃん」
「地元の高校は俺なんかとってくんねーよ、分かってんだろ」
「でもっ」
「…もう決めた事だから」
言いにくそうに、だけどハッキリそう言った。
「だって青道なんて寮だし、すごく遠いじゃんか」
「…あぁ」
「もう会えなくなっちゃうんだよ?」
「…そーだな」
「何で、勝手に決めちゃうの?」
「…わりぃ」
倉持はがしがしと頭を掻きながら、あたしから目を逸らす。
本当に本気なんだ。
あたしを置いて、一人で遠くへ行っちゃうんだ。
「…もういい」
「遊夜」
「もう会わない、ばいばい」
言い残して、あたしはその場を立ち去った。
倉持は、追ってこない。
うっすらと雪の積もる地面に涙がぱたぱたと落ちていく音が、やけに大きく聞こえる。
青信号がチカチカ光る横断歩道を渡りきり、振り向かずに涙を拭った。
信じられない。信じたくない。大好きだった。ヤンキーでバカだけど、いつもあたしと笑ってくれた大好きなあの人はもういない。
足をとめ、振り向くと、信号は赤になっていた。
中3の冬、あたしは倉持と別れた。
すごく好きだった
今も張り裂けそうなほどの
懐かしいほろ苦い思い出