「亮介、あたしもう行くよー?」
「……」
「もーさっきから何でそんな機嫌悪いかなー」
「…別に」
「別にじゃないじゃん!」
「……」
「…亮介ー」
「……」
雨で午後オフ。
亮介の部屋に来ていたあたしは、出かけようとパンプスに突っ込んだ足を抜いた。
「亮介がそんなだと、行けないんだけどあたし」
困った顔をして玄関に座り込むと、亮介がテケテケ歩いてきてあたしにぎゅっと抱きついた。
「…ど、どうしたの」
珍しい、なんて言うと亮介は聞こえるか聞こえないかの凄く小さな声で呟く。
「じゃあ行かないでよ」
「…えーっと、」
「何で純の彼女へのプレゼントの買い物に、遊夜が付き合わなきゃいけないの」
「…前、いいって言ったくせに」
「純とデートじゃん、そんなの」
「雨でオフだけど純だって自主練するだろうし、すぐ帰ってくるよ?」
「……」
亮介は黙り込むと、あたしに抱きつく力を強めた。何これ可愛い。
「亮介、甘えたさーん」
「…バカにしてる?」
「いや?可愛いなーって」
「…バカにしてるじゃん」
「亮介好きー」
「知ってる」
「…行っていい?」
「ダメ」
あらら困った。純との約束の時間は10分も前に過ぎてるのに、どうやら亮介が離してくれる気配はない。
「あたしだってほんとは亮介とお出かけしたいんだよー?」
「でも純といくんじゃん」
「…もー」
珍しく拗ねて甘えて、可愛いんだけどちょっと困る。
抱きついてきて顔を全く見せない亮介の前髪をかきあげて、おでこにちゅっとキスしてあげた。
「こういうのは亮介にしかしないよ」
「……」
「亮介、耳真っ赤」
「…遊夜は生意気」
「え、」
気付いたら、床に押し倒されてた。
「遊夜のくせに、俺のこと可愛いなんてよく言うよね?」
さっきまでの可愛い亮介はどこへやら、そこにはいつもの勝ち気な表情の亮介。
そのまま首元に顔を埋める。
「…りょ」
「黙って?」
口を塞がれて、手も押さえられた。あっという間に立場逆転。
頬、耳、額に散々キスをおとされて、首がやたらとチクチクする。たぶんキスマークだらけだろう。
バンッ
「遊夜てめぇ遅ぇんだよ…って何やってんだオラァァァ!」
「「あ」」
亮介に馬乗りになられて服も少し脱がされた格好のまま、部屋に入ってきた純とバッチリ目が合った。
「ごめん純、もうちょっと待って?」
「ふざけんなだらっしゃああああ!」
(純、ジャマ)
(…俺が遊夜と先に約束してたのによー)
(何か言った?)
(何でもねーよ!)
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甘えた亮さんきゃわたん。
オチに使いやすい純さん。