「ねーねー純」
「んだよ、遊夜」
「今日ハロウィンじゃん?」
「おう」
「お菓子あげる日じゃん?」
「いや、ちげーだろ」
「え、ちがうの?」
「あげるんじゃなくて、もらう日だろ」
「じゃあ純たべたい」
「お、俺は菓子じゃねーよ!」
「うわそんな赤くなんないでよ、あたしまで照れる」
思わず狼発言をしてしまうと、名前通り純情な純は顔を赤く染めた。
こいつの照れ屋具合にはもう慣れたはずだったんだけどな。
「あたし、作ったんだよねお菓子」
「まじか」
「まじまじ」
「お前それバレンタインじゃねーの」
「細かい事気にしないでよ」
あたしは自分の鞄からガサゴソと四角いタッパーを取り出して、純の目の前に置いて開く。
「何か、ピンクのイメージなんだよね。純って」
「…すげー甘そう」
「めっちゃ甘いよ、たぶん」
「…俺よ、甘いの苦手なんだけど」
あ、すっかり忘れてた。
「あちゃーごめん、持って帰んね」
「いや、食う」
「いいよ無理しなくて」
「無理なんかしてねーよ」
「や、でもさ」
「俺のために作ってくれたんだろ」
だから食う、と言って、純はタッパーの中からひとかけら取って口に放り込んだ。
「…どう?甘い?」
「…意外と酸っぱい、食える」
「そっか良かった」
「お前も食え」
「え」
「ほら、あーん」
純に口まで指を持ってこられて、思わずパクッと食べた。
指についた溶けた残りを純が舐める。
「…何みてんだよ」
何だかその仕草がエロくて思わず見入ったら、目が合った。
「なんか悔しい」
「あ?」
「あたしもあーんする!」
「は?ちょ、いらねーよ!」
「するったらする!ほら口あけて!あーんして!」
自分がされるとなったら真っ赤になった純の口に、あたしはピンク色の欠片を放り込んでやった。
ストロベリーチョコレート
(食いすぎてきもちわりー…)
(ごめん、入れすぎた材料あるの)
(なんだよ、砂糖か?)
(愛だけど)
(……)
(赤くなんないでつっこんでよバカ)