「倉持ーお菓子たべたーい」
「あー?」
「何か持ってないのー」
「ねー」
「何でーハロウィンだよー」
「あー?」
「とりっくおあとりーとー」
「……」
「な、なに」
保健室でサボり中、先生もどっか行っちゃって、今は倉持と隣通しのベットで二人きり。
お互い仰向けで話したはずなのに、気づいたら目の前に倉持がいた。
「…どしたの」
つまり、あたしは今倉持に組み敷かれていることになる。
「いや、菓子ねーし悪戯してやろっかなと思ってよ」
「はぁ!?」
「ひゃは」
「…ちょ、…っ」
首元に顔を埋めてくる倉持。そのまま舐められて、あたしは思わず身をよじる。
「く、ら、もち…」
やばい、何か変な気分になってきた。いやあたしは変態か。
てゆーかだめだここ学校だし。
「ちょっと、やめれ、やめなさい」
「…んだよ、ケチ」
「学校で盛んないでよバカ」
あたしが倉持の頭をぐいぐいとどかすと、舌打ちをし、ベットの脇に座る。
「…あ」
「なによ」
「あったわ、菓子」
ほらよ、と言って倉持は内ポケットから可愛くラッピングされた袋を投げてきた。
「何これ、倉持作ったの?」
「な訳ねーだろ」
「だよね」
「もらったんだよ」
「…だれに」
「知らねー子、なんか顔真っ赤にしてくれた」
それって、倉持の知らない倉持のこと好きな子が、手作りお菓子を倉持にあげたってこと?
そんで受けとったってこと?
「……」
「…どしたんだよ、遊夜」
あたしは倉持の腕を引っ張って、逆に押し倒してやった。
だって、むかついたんだもん。
「…別に、何でもないけど」
そのまま倉持にキスをする。びっくりしたように、肩が揺れた。
何それ、可愛い。
「ねぇ、倉持」
「…んだよ」
「あたしがこれ、全部食べるから」
そう言ってピンク色の袋の中身を取り出し、かじりつくとサクッと軽快な音がなった。
倉持のこと好きでいるのは、あたしだけで充分なんだから。
ダージリンクッキー
(ヒャハ、やきもちか?)
(調子のんな)
(お前からキスなんて初めてだろ)
(……)
(かわいーじゃねーか)
(…やきもちやきました)
(…俺まで照れんじゃねーかよ)