eternal triangle
三角関係

「カレーうどん1つ」
「ヒャハ、制服に汁がとびまくるぜー」
「やっぱりうどんで!」

ふざけて言っただけなのに、御幸は焦ってあっさりとメニューを変えた。カレーうどんからうどんってあんま変わってねーだろ、どんだけ太麺食いたいんだよ。てか昼休みの食堂混みすぎ、正直かなりウザい。しかも今俺達には丁度よく彼女がいないので、仲良く男2人で昼飯を食う始末だ。

「なぁ御幸お前、いい加減彼女つくれよ」
「倉持こそつくれよ」
「お前はモテんだろ」
「まーそーだけど」

けっ。否定しないのがまた腹立つな。わり箸をパキンと割りながらいただきまーすと言って、御幸はうどんを食べ始めた。俺も購買で買ってきたパンに手をつける。

「はーふはほひほほへんひゃん」
「飲み込んでから喋れよ!全然わかんねー」

食べながら言う御幸に母親みたいに怒った俺。ゴクンと喉仏をふるわせて御幸は口を開いた。

「まー倉持もモテんじゃん?」
「…お前みたく手当たり次第に付き合わねーし」
「いや俺今本気の恋してるから♪」
「は!?」

御幸が?恋?本気の?ありえねー、ありえなさ過ぎて逆に笑える。

「誰にだよ?」
「えー…」
「あ、御幸先輩!」

渋る御幸にいきなり高い声がかけられた。俺は御幸と向かい合わせで座っていたので、振り向かなくても顔が見えた。少し背が低い、かなり顔の整った女の子だ。てゆーか整い過ぎじゃねぇか?

「遊夜!昼飯か?」
「はい、今日お弁当忘れちゃって…」

てへ、と悪戯っぽく笑った顔が似合っていた。なんだこの子、可愛すぎるだろ。

「あれ?倉持先輩?」
「え、何で名前…」
「レギュラーの名前は、覚えちゃってて」
「野球好きなのか?」
「大好きです!」

う、わ。今の笑顔やばい。惚れた。

「遊夜、行くよ!」
「あ、うん。じゃあまた、御幸先輩倉持先輩」

友達に呼ばれたらしい遊夜という少女は、ぺこりと頭を下げてから駆けて行った。俺の心臓はやけにうるさくて、去っていく彼女に名残惜しささえ感じていた。

「…御幸、知り合い?」
「ん、妹の友達。かっわいーだろ」
「可愛すぎだろ」
「俺が惚れただけある」

…は?今の、聞き間違いじゃねーよな?

思わず御幸を見てみると、少し顔を赤くして微笑んでいた。あぁ、聞き間違いでも、冗談でもなさそうだ。

「…ふーん」
「倉持も惚れたんだろ」
「は!?何で分かんだ!」
「はっはっはっ、墓穴」

しまった、はめられた。ニヤッと笑う御幸は、いつも通りだった。

「…遠慮はしねーから」
「望むところだよ」

お互い宣戦布告をして、とりあえず残っていた昼飯にがっついた。



「…あっちー」

場所は変わり、グラウンド。午後の授業を終えた俺達は、野球の練習へと励んでいた。

「倉持、ドリンク」
「…うぃっす」

亮さんから笑顔で命令…いや頼まれて、俺は部室へと走る。その途中に水道を見つけ、ついでに汗を流そうと近寄った。

「御幸先輩、話って何ですか?」

耳に入ったのは、昼に聞いた高い声。俺は足をとめ、息をひそめた。

「あー、遊夜って今彼氏いる?」
「あは、いませんよ」

にっこり微笑む彼女の顔が見えるようだ。てか御幸、行動早すぎ。抜け駆けかよ。あーダメだ気になる。俺は壁から少し身を乗り出し、御幸と遊夜に目をやった。

「じゃあ俺が立候補してもいい?」
「…え?」

─!?

そのとき見えた光景に、俺は血管がぶち切れそうになった。

キスした。御幸が、遊夜に。ダメだ、何で、抑えられない。御幸を殴りたい。今すぐぶっ飛ばしてやりたい。

「返事は急かさないから、俺練習戻るね」

足早に去っていった御幸。俺の足は動かない。動きたいのに動けない。色んな想いが頭の中でグルグルと交差する。もし遊夜が御幸を好きなら2人は両思い、俺の出る幕はねぇ。じゃあ俺の気持ちなんか、

「…倉持先輩」

え!?見つかっちまってたのか!?慌てて遊夜を見ると、顔を両手で押さえてうずくまっていた。見つかってはいないようだ。じゃあ何で俺の名前を呼んだんだ?

「…遊夜」
「えっ…」

遊夜の前まで行き、かがんで声をかけたら、驚いて顔をあげた。

「な、何で」
「呼んだだろ?今」
「あ…」

顔を真っ赤にする遊夜。やべー可愛い、今すぐ抱きしめてやりたい。

「あの…倉持先輩がレギュラーだから知ってるなんて嘘なんです」
「ん」
「好きだから、です」

そ好きだ。もっとちゃんと俺のもんにしてぇ。

「…俺も」
「え?」
「御幸にはやらねぇ」

さっきのキスを消毒するように、俺は遊夜に深く深くキスをした。





eternal triangle
三角関係
































(三角関係なんて一瞬で終わってんじゃん)
(ヒャハ、悪ぃな御幸)
(あんま早く手ぇだすんじゃねーぞ!)
(お前と一緒にすんな!)

確かに恋だった
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