素直になれないお姫様


「…あれ?椎名じゃん」


部活も自主練も終わった夜の10時、どうしてもアイスが食べたくなった俺は近所のコンビニに足を運んでいた。


「くらもち!何であんたここにいんのよ!」
「いちゃわりーのかよ」
「寮は」
「ちょっと抜けてきた」


そこにいたのはクラスメイトの椎名遊夜。いつも悪態をつき合うツンツン女子だ。


「お前こそ何してんだよ」
「アイス…食べたくて」


考えること一緒かよ。


「ひとりか?」
「そうだけど」
「危ないだろこんな時間に。お前女なんだか…」


言い終わる前に椎名の顔を見て俺はぎょっとした。椎名の顔は真っ赤だった。

なんでだ。俺なんか変なこと言ったか?


「椎名?」
「子供扱いしないでよっ」
「いや子供っておま…何歳になっても女なんだし」
「…っ」


椎名は顔をふせた。
何度見直しても顔が赤い。

熱でもあんのか?
今日はいつもにましてツンツンな気がする。


「…あたし、アイス買ってくるから」
「何食うんだよ」
「これ」


そう言って椎名が指差したのは。某有名メーカーのお高いアイスクリームだった。

「たけーな」
「おいしいからいーの!」
「ふーん」


俺は椎名が指差したアイスと自分用の棒アイスを手にとり、レジに向かった。

そしてそのまま会計を済ませ、スプーンと一緒にアイスを椎名に向ける。


「ん」
「あ…お金」
「いらね」
「いや、でも」
「行くぞ。家まで送る」
「えっ!?」


驚く椎名を置いて、先にコンビニを出る。棒アイスのパッケージを剥がし、かぶりつくとひんやりとした。


「大丈夫だし!あたしもう子供じゃないもん!」
「年関係ねぇ!襲われんぞ」
「襲われない!」
「襲われる」
「襲われない!!」


なんなんだコイツ。自分はまっすぐ家に帰るだけなんだから素直に送られてりゃいいのに。


「じゃあ俺が襲うぞコラ」
「…っ」
「ほら行くぞ」


再び歩きだそうとすると、服のすそを握られた。

振り向くと、顔を真っ赤にして椎名が俺を見つめていた。



なんだこれ。

超可愛いんだけどコイツ。




俺より低い背。
狭い肩幅。
細い腰。


ちっせ。




「倉持のバカ…」


涙目で俺を睨んで呟く椎名を思わず抱きしめたくなった。


俺、こいつの事好きなのか?

こいつ、俺の事好きなのか?


「倉持なんか嫌い!」
「嘘つけ」
「はぁ!?」
「お前、俺のこと好きだろ」
「なっ…」


否定しようとする椎名を引き寄せて、黙らせるようにキスをした。


「俺は好きだけど、椎名」
「…!」
「素直になれよ」
「…好きだバカ」







素直になれないお姫様



(だから送るから)
(…ん)
(急に可愛いなお前)
(うるさいバカ)


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