鈍感なお姫様

今日も俺の目の前で頬を膨らまして、仁王立ちしている女の子。

「…何でいつまでも教えてくんないの」
「秘密主義者ですから」
「御幸そればっかり!」

耳にたこができるほど聞きましたー、なんて言いながら拗ねるのは同じクラスの椎名。俺の好きな子。

可愛すぎる。

毎日毎日こいつは俺に向かって同じ質問を繰り返すんだ。

「…ねぇー御幸」
「ん?」
「好きな人、誰」

思わず吹き出した。性懲りもなくまた同じ疑問文をリピート。いつだって俺の答えは同じなのに。

「秘密」
「なんで」
「秘密主義者だから」
「もー!」

ニヤニヤしながら答えると、椎名は俺の机を思い切り叩いた。

「教えてくれてもいいじゃん御幸のばあかっ」

うわ。御幸のばあかだって。めっちゃ可愛い。

「椎名よりはマシ」
「…うっ」
「俺の好きな人なんて聞いてどーすんの」

俺の事好きだから。とか言ってくんないかなーとか思ってみる。けど椎名にそんな期待するのは無駄過ぎる。

何故ならコイツは、


「…興味本位?かな」


常に気分で生きているような人間だから。


「なんだそれ」
「キョウミホンイ」
「…教えてやろっか?」
「え」

椅子の前足をあげて揺らしながら言うと、椎名は目を輝かせた。

「椎名」
「……」

冗談にとられるかもしれない。こんな告白の仕方ないかもしれない。けどストレートに言わなきゃ椎名には伝わらない気がした。

「……」

俺の方をじっと見つめて、口を開かない椎名。ずっと黙ったままで何も言わない。

「……」

なんか、なんか言えよ。イエスでもノーでも何でもいいから、なんか言ってくれよ。

「……椎名?」
「ちょっと御幸じらしすぎ、早く言ってよ」
「は?」

口をへの字にして、上目遣いで俺を睨む椎名。可愛い…いや可愛いよ?けど何だ今の。今のセリフの意味がわからん。

「前置き長すぎー!早く教えて」
「いやいや…俺さっき言ったよな?」
「言ってないよ!あたしの名前呼んでからずっと無言じゃん!」

…自覚ないんだ。

俺の決死の告白をまさかのスルーかよ。なんだこいつ自由に生き過ぎだろ、なんだこいつ、

なんだこいつ、可愛すぎだろ。

「…椎名の好きな人って誰だよ」
「知らないの?」
「知らねーよ」
「あたし基本、他人に興味ないよ」
「は?」
「興味あるのは好きな人だけだよ?」


興味あるのは、好きな人だけ?それが椎名の好きな人に何の関係があんだよ。

『俺の好きな人なんて聞いてどーすんの?』
『…興味本位?かな』

─あ。まさか、

「…俺?」
「遅!御幸にぶっ」

呆気にとられる俺を見て、けらけら笑う椎名。

にぶいとかお前だけには言われたくねぇよ!

「椎名!」
「なに……っ」

名前を呼ばれて振り向いた椎名の腕をつかんで、引き寄せた。

そのまま勢いに任せて、外人の挨拶みたいな、とても軽いキスをした。

「俺の好きな人」
「…え」
「今キスした人」

きょとんとしていた椎名の顔は、数秒後に赤く染まった。






鈍感なお姫様

(御幸、今の)
(ん?)
(…もっかい)
(…っ可愛すぎ!!!!)















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5ヶ月ぶりに書いた

むちゃくちゃだあー
御幸よ、ごめんね


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