泥棒つかまえました

その人は打席が1番。その人は背番号が6番。その人のポジションはショート。その人は泥棒。

「倉持先輩っ!」
「お、遊夜じゃん」
「今日のスチールかっこよかったです!」
「ヒャハハ、さんきゅ」

ずきゅーん!!倉持先輩に微笑まれるたびにあたしのハートは盗まれる。倉持先輩は塁を盗むだけじゃなくて、あたしの心も盗んでしまった。
たまたま野球部のグラウンドを覗いたとき、倉持先輩が輝いてたのなんのって。一目惚れでべた惚れてしまったあたし。けど、大きな悩みがひとつあるんです…

「先輩すきですっ」
「俺もだぜ遊夜♪」

…ホラ、あたしは全く先輩に相手にされていない。どれだけアピールしても本気にしてくれない。年下だからなのかな?悲しくてたまらないよ。

「ねぇ…倉持くん」

あたし達ふたりにかかった高い声。背の高い綺麗な女のひと…きっと、倉持先輩と同じ二年生。

「ちょっといい?」
「あぁ…ちょい行ってくるわ遊夜」
「は…はい」

ひきつらないように気をつけて精一杯微笑んだ。どうしよう、絶対告白だ…どうしようどうしようあんな可愛い人、断るはずがないのに。

「…ねぇ泣いてるの?」

涙を流すあたしに声をかけたのは、いつも倉持先輩とコンビをくんでいる三年生…確か小湊先輩。あたしがいつも倉持先輩に喋りに行ってたから覚えてくれてるのかな。

「…あたし1年早く生まれたかったです…」
「なんで?」
「だってあたしが年下だから倉持先輩は…」
「そんなことないよ」

小湊先輩はあたしの頭を撫でてくれた。大魔王とか言われてるけど良い人なんだな…

「亮さん」

聞き慣れた声が聞こえてハッとした

「倉持」
「すいません…そいつに触らないでくれます」
「なんで?」
「…好きだからです」

え。

「クス…素直だね」

小湊先輩は笑ってどこかへ行ってしまった。

「く、倉持先輩」
「ヒャハっ今更何だよいつも言ってるだろ」
「冗談…じゃ」
「いつも塁盗んでる俺がお前にハート盗まれた」

ほ、ほんとーに?やばいあたしこれ夢かな?夢じゃないよね?
あたしは倉持先輩に抱きついた。

「うおっ」
「泥棒つかまえました」
「お前もだろ?」
「…あは」































(小湊先輩って良いひとですよねー)
(え。…そ、そうだな)
(倉持何で噛んでんの)
(りょ、亮さん!)

確かに恋だった
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