丁重にお断りします

「御幸御幸」
「…」
「ねぇってば」
「…」
「みーゆーきーっ」

俺の前の席に座って顔をのぞきこんでくる女の子は俺の片思いの相手。さっきから無視しまくってるけど、本当は返事したくてたまらない。けど椎名に一度かまったらもう逃げられない。我慢だ俺、我慢我慢。スコアブックを握る手に力が入る。

「…御幸ー」

しょげた顔で上目遣いをして俺を見る椎名。やべー可愛すぎる、我慢とか無理だろコレ。あぁー返事したい、てかもう抱きしめたい。いやいや我慢だ俺、スコアブックを見るのはキャッチャーの仕事だ。

「ヒャハっ、なにしてんの?椎名」
「倉持いー御幸が構ってくれないよー」
「おー珍しいな」

我慢だ俺。たとえ倉持と椎名が喋ってても俺はスコアブック一筋、

「ひまだよ〜」
「俺が構ってやるよ」
「えっほんとっ?」

おいおいそこで食いつくなよ椎名…誰でもいいのか?俺はそんな子に育てた覚えはねーぞ。あ、倉持テメェ椎名の頭触ってんじゃねえよ!

「お前髪ながすぎだろ。ヒャハハ」
「チャームポインツ!」
「いみわかんねっ」

…我慢だ俺。恋人はスコアブック恋人はスコアブック…。

「なぁ椎名お前って彼氏いねーよな?」

は!?何聞いてんだよ倉持のやつ!

「うんっいないよー」

可愛い顔で答えてんじゃねえよ椎名!やばい、倉持が今の笑顔に落ちた。だめだもう限界。

「じゃあさ俺と付き合わねえ?」
「ていちょうにお断りします」

立ち上がって椎名に後ろから抱きついて、肩に顔をのせて倉持に笑顔で言い放ってやった。

「みっ御幸!!」

顔を真っ赤にした椎名が俺の名前を叫ぶ。
その顔は倉持の言葉に?それとも俺が抱きついているから?

「椎名ー好き、俺と付き合って?」
「は…え…うっ…うん」

案外あっさりカップル成立♪はっはっはっ、悪いな倉持俺の勝ちだ。俺は床に落ちたスコアブックを拾ってはたいてみせた。































(倉持ーありがと)
(おやすいごようよ)
(え、なに何の話?)
(ヒャハハっ今のは俺と椎名が考えた御幸を落とす作戦なの)
(…まじかよ)

確かに恋だった
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