喜劇のヒロイン

もう御幸なんか…
御幸なんか知らない

あたしは溢れてくる
涙をこらえて
体育館裏の水道で
うずくまっていた

ついさっき、御幸が
可愛い小さな女の子を
抱きしめている現場を
見てしまった。

その瞬間に御幸と
目があったのに、
悪びれのない表情で
目を背けられた、

あたしって御幸の何?
彼女じゃなかったの?

「バカみたい」

ダメもとで告白したら
OKしてくれただけ

あたしが勝手に
つけあがっただけ


御幸にしたらハグは
挨拶みたいなもの?
ここは日本だよ

やばい…なみだか
とまらない…

ビシャッ

「〜!?」

悲劇のヒロインに
なったみたいに
泣いていたのに、
急に背中に大量の
水がかけられた

後ろを振り向くと
野球部特有の白い
ズボンが見えた

「わりぃ!大丈夫か!?
…何だ、椎名かよ」
「あたしだったら
いいんかいっ倉持!」
「勢いよく蛇口
ひねりすぎた♪ヒャハ」

なんだ倉持か。
一瞬焦った

御幸じゃないから
少し…残念

あぁ あたしバカだな

付き合ってたって
片思いみたいなのに

「てか何でこんな所で
って椎名泣いてる?」
「泣いてない!水!」
「目、あかすぎ」
「う」
「御幸か?」

心配そうに腰を屈めて
下からのぞき込まれる

倉持は基本優しい。
口は悪いくせに
絶対こうゆうときは
心配してくれる

思わずこくん、と
素直に頷いてしまった

「…心配すんなよ」

ぽんぽんと頭を
軽く倉持がたたいた時
あたしの体は誰かに
後ろに引っ張られた

目の前にいた倉持と
少し距離があき、
頭をなでていた手は
宙に浮いている

「…なにしてんの?
倉持」

声でわかった。
御幸しかいない。

「俺のにさわんなよ」

そう言ったとき
心臓が激しく鳴った
それと同時に苛立った

─あんたはさっき
抱き合ってたじゃない

「あーみゆ…」
「ざけんな御幸っ!!」

倉持の言葉とあたしの
罵声がかぶった。
ごめん倉持言わせて

「あんたさっき女の子
抱きしめてたじゃん
なのに何で倉持に
そんな事言えんのっ!!」

てゆーか離せ!と
御幸に後ろから腕を
まわされた体制のまま
あわあわともがいた。

御幸は吹き出した。

「遊夜ちゃん可愛い」
「は!?ごまかすなーっ」
「あれ男の子だから」
「ふざけ………はい?」
「ちなみに倉持」
「おい言うなよ御幸」

いやいやいやいや
話が読めない。
倉持が女の子?
いやそっちじゃない
女の子が倉持?

「罰ゲームで倉持に女装
させたら案外可愛くて
抱きしめちゃった俺、
みたいな」
「その後御幸は速攻
スパーリングな」
「なにその…オチ」

うわ 恥ずかしい。

1人で盛り上がって
泣いたりなんかして
むちゃくちゃバカだ

どうしようなんか
また涙

「遊夜ちゃーん
ヤキモチだよね?」
「く…倉持になんて
思わなか…っ」
「うーん俺にしたら
ラッキーだからね、
はっはっはっ」

そう言いながら
御幸はあたしを
両手で抱きしめた

「俺が遊夜以外の女に
抱きつく訳ねーだろ」
「うぅー御幸いー」
「何だね遊夜ちゃん」
「だいすきいー」
「!」

御幸が彼氏な限り
あたしはきっと
悲劇のヒロインになんて
なれないかもしれない






























(ヒャハっ御幸、顔赤)
(うっせ空気よめ)

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