種明かし禁止

「あたし今日デート」
「は?女だろ?」
「男だよ」

意味わかんねー。何アッサリ言ってんだよこいつ…ふざけんなよ、男って誰だよ?人が必死で野球してんのにお前はデートすんのかよ。なんかすげぇムカつくんだけど。

「…彼氏かよ」
「さあね〜」

はぐらかす椎名にイライラした。俺、倉持洋一と椎名遊夜はクラスメートである。断じて彼氏彼女なんて仲ではない!だけど友達の域じゃねぇ…てゆーか親友?とりあえず男と女なんて関係なしで仲が良い。そんな椎名がいきなりどこの馬の骨かもわからねぇ奴とデートだと?襲われたらどうすんだボケ!

「相手の名前なに」
「倉持、気になんの?」
「仮にも親友だからな」
「…はぁー」

ため息をつく椎名。何だよ、何でそこで幸せを逃してんだよ?親友発言しただけじゃねえか。

「うちらは親友か〜」
「違うなんて悲しいこと言うのかよ?」

ヒャハッと笑うと、また椎名はため息をついた。何だよそれちょっと落ち込むんだけど。

「親友のデートの相手なんて気にしないでよ」
「…そーだよな」

俺だって何でこんなに気になんのか分かんねぇんだよ!!イライラして仕方なくて、椎名のデートの相手の名前聞いて今すぐ殴りに行きてぇくらいムカついてんだよ!理由は分かんねーけど!

「ねぇ倉持」
「あ?」
「もし本当に彼氏だったらどうする?」

椎名は俺の目をジッと見つめて聞いてきた。やべー可愛い…こいつこんなんだったっけ。

「そいつ殴る」

とりあえず思ってる事をそのまま言ってみた。それなのに、椎名はいきなり真っ赤になった。

「…え、俺今何か変なこと言ったか?」
「倉持…それってさ」

やきもち?と言われて、気付いたら俺の顔まで真っ赤に染まっていた。

「ち、ちげーよ!椎名に彼氏いたら、そいつがムカつくだけだ!」
「だからっ何で?」
「何で…って」

なんでだ?分かんねー
俺と椎名は真っ赤な顔を見合わせた。なぜか必死な目線で俺を見てくる椎名に無性にさわりたくなってしまった。

「なぁ椎名」
「…なに」
「分かんねーけど、とりあえず抱きしめたい」
「は!?」

勢いに任せて、目の前にいる椎名を抱きしめた。何かちっちゃいし、どうしようもなく可愛い。どうしちまったんだ俺

「倉持!ここ教室…」

聞こえねぇ。

「くら、もちっ」

そんな弱い力で引きはがせると思うなよ。絶対離してやんねえ、デートする男の所になんか行かせてやんねえ、このまま俺のもんにしてえ。…ってこれじゃ変態じゃねぇか。御幸じゃあるまいし、御幸…御幸?そういえば御幸、自分のもんにしたいって女は好きな女だけだよな、とか言ってたよな。…あれ、それって

「あ」

間抜けな声が出た。御幸からの言葉を思い出して、俺のこの椎名に対する訳のわからない感情が何なんのかが、分かってしまったから。

「椎名」
「ん?」
「好きだ」
「!」

俺の腕の中で椎名の肩がビクついたのが分かった。やっぱ驚いたな?だって俺も今俺の気持ちに気付いたばかり。

「はっはっはっ、良かったな〜椎名」
「は!?御幸!」
「倉持お前気付くの遅すぎじゃねー?」

急に現れた御幸が意味がわからない事を言い出した。

混乱して力を緩めた俺の腕の中から、椎名は身を乗り出した。

「御幸、種明かし禁止」
「うーんでもねー」
「おいっ何の話だよ?」

俺ひとりだけ話が掴めない。はみごかよ、

「鈍い倉持は椎名に対する気持ちを自覚してなかったから、気付かせてあげただけ」

そう言ってニカッと笑った御幸に寒気がした。

「椎名のセリフは俺が考えてみました」
「はあー!?」

じゃあ俺は御幸のセリフで椎名への気持ちに気付いたのか?やべー嫌だ!嫌すぎる!肝心の椎名を見てみると、あちゃーと言う風に顔をそらしていた。

「椎名ー!?」
「だ…だって、あたし!倉持が好きだから、倉持に好きって言ってほしかった、だけ、なの」

うわ、セコい。真っ赤になってそのセリフ。もう怒れねーじゃねぇか。

「…じゃあ全部嘘だったんだよな?」
「倉持以外の人とデートする気ないよ」
「っ、馬鹿野郎」

かわいすぎんだよ。そう言って俺はまた、強く椎名を抱きしめた。





































(何で御幸なんかに協力頼んだんだよ)
(御幸から言い出してくれたんだよ)
(は?あの野郎〜)
(御幸良い人だよ?)
(…御幸後で殺す)

確かに恋だった
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