出口どっち?
『遠距離恋愛』とゆーものをしています。
あたしは千葉、倉持は東京の高校に通ってるんだけど…なんだかんだ中学からずっと続いてる。なんだかんだ倉持が好き。倉持もあたしが好き。あ、黙れとか言わないで。惚気ですいません。そして今日は自分の学校をサボって倉持の学園祭に来てしまいましたー
倉持から言われていた教室を見つけて、恐る恐る扉をひらいてみた。
「いらっしゃいませ」
「…は?」
何だこのイケメン眼鏡は。かっこいいな、てゆーかこいつら全員黒スーツじゃねぇかよ。やばい嫌な予感がする。
「お、椎名」
「倉持…あんたこのクラス何してんの」
「ヒャハッ見てわかんねえかよ?ここはなー」
いや…分かるけど、分かりたくないというか。
「ホストクラブ」
「…やっぱり」
教室を見回すと、スーツを着た男達が女の子相手に営業している。バカみたい…子供の分際で生意気な、ってじゃああたしの彼氏もバカなのか。
「倉持知り合い?こんな可愛い女の子と」
「おー彼女。手ぇ出すなよ?御幸」
「はっはっはっ、どうしようかねー」
なるほど、この軽そうなイケメン眼鏡は御幸君っていうのか。そして倉持と仲が…良いのか?
「椎名、来いよ」
「あ、うん」
とりあえずあたしは客なので、ド派手に飾られたソファーに倉持と腰掛けた。てか倉持、スーツかっこよすぎんだけど。
「久しぶりだな〜椎名♪変わってねえ」
「あー倉持は、何かちょっと変わったね?」
「そうか?ヒャハっ。あ、お客さんドンペリいれます?」
いやいや思い出したように営業しなくても。しかもドンペリってオイ。
「え、まじで酒?」
「な訳ねーって、ドンペリはオロナミンC」
「…無理矢理だね」
「まあ未成年だしな♪」
「倉持スーツ似合うね」
「うわ、お前に言われると照れんだけど」
顔を合わせるの久々なのに、ちゃんと喋れてる。あー幸せ…あたしやっぱり倉持が大好きだ。
そんな思いも束の間。倉持に声がかかった。
「倉持ー!指名はいったからちょっと来て」
「…あー、わりぃ椎名行ってくる」
「うん、行ってら」
指名かかったのか。倉持に…、え!?指名!?なに倉持ってモテるの?いやそりゃかっこいいよムチャクチャかっこいい、彼女の贔屓目をぬいても倉持はかっこいいよ。倉持って実は人気あったの?あたしのいてない学校で?やだ、どうしよ。今まで安心してたあたしがバカみたいだ。
「お嬢さーん、ヘルプはいりました」
「…えっと、御幸君?」
「倉持いなくて暇でしょ?俺の相手してよ」
気、遣われたのかな。それでもいいや…どうせ1人でドンペリまがいのオロナミンC飲んでも寂しいだけだしね。
「遊夜ちゃんは倉持の彼女なんだよね」
「あ、うん」
「いつからいつから?」
「え…中三の夏くらい」
「じゃあもう2年じゃん、すげー長いね」
すらすら喋る御幸君…絶対、女慣れしてんな。黒縁眼鏡に黒スーツなんてイケメンと合わせたらダメでしょ。おーい隣でこの子眩しいんだけど。
「御幸君みじかそう」
「はっはっはっ、あったりー♪もって2ヶ月」
「…見た目通りだね」
「うお、意外とキツいね遊夜ちゃーん」
「ありがと」
「いや誉めてねえよ」
なんか御幸君おっもしろー。あーあ、でも倉持が気になって仕方ない。何やってんだろアイツ。今の御幸君みたいに巧みな会話してんのかな?嫌だな。
「…あ」
倉持、見つけた。
青道の制服を着た女の子達と、楽しそうに話している。ずきん、胸が痛い。やだよ見たくない、見たくない見たくない、他の子に向けた笑顔なんて
「…御幸くん」
「ん?」
「出口どっち?」
「え、帰んの」
「帰る」
「ちょっと待って」
ソファーを立ち上がったあたしの手を御幸君が握った。何で引き止めるの、嫌だあたしは帰りたい倉持なんか知らない
「御幸君、離し…」
「離せよ御幸」
え、
言い終わる前に、あたしの手を掴んでいた御幸君の手が引き端がされた。倉持、何してんの、営業はいいの?
「遊夜にさわんな」
あんたこんなキャラじゃなかったじゃない。いつも余裕で、ヤキモチなんか妬かなかった癖に、急に何なのどうしたの。
「…倉持いー…」
あたしは倉持に後ろからぎゅっと抱きついた。ねぇ、嬉し過ぎるよ。ヤキモチ妬いてたのはあたしだけじゃなかったんだ
「…お前、何勝手に帰ろうとしてんだよ」
「だってえー」
「泣くなバカ」
倉持、大好き。あたしから離れんな馬鹿野郎
「好き、他の子に笑顔なんて見せないで」
「それ俺のセリフ」
「ヤキモチ妬いた?」
「メチャクチャ」
照れたように目を背けていじける倉持が可愛い。あたし病気かも、倉持が愛しくてたまんない。
「まだ出口聞くか?」
「もういらないよ、倉持と居たいもん」
「お前可愛すぎ」
遠距離でもなんでも、あたし達の愛はもっともっと深いみたいです。
(あたし倉持にあすなろ抱きしてみたいー)
(ヒャハっその身長じゃ一生無理だな)
(じゃあ倉持がしてよ)
(!…お前、反則だろ)
確かに恋だった