15文字以内で

「王手」
「む、」
「御幸つよーい」
「哲さんが弱いんです」

合宿の真っ只中の今日。夜に御幸の部屋に集まる習慣に便乗し、三年マネージャーのあたしは部屋に上がり込んでいた。目の前では正座している哲と寝転んでいる御幸が将棋をしている。あたしもルール分かるけど、哲、弱すぎるよ…(笑)

「哲さんまだですかー」
「ちょっと待て御幸」
「もう無駄ですってー」

哲の王将のまわりには、御幸の金、銀、飛車、角などが散りばめられている。もうどこにも逃げ道はない、哲の負け。

「哲〜諦めなよ」
「……参りました」
「はっはっはっ、素直っすね哲さん」
「御幸は強いな」
「あ、じゃあ俺勝ちましたんで…」

御幸はニヤリと笑いながら、横に座って二人の対戦を見ていたあたしの腕を引っ張った。え、なんだコイツいきなり

「遊夜先輩と俺、二人で遊んでいいっすか?」
「はっ?」

御幸、バカ?あんたみたいなエロ眼鏡と遊ぶなんて絶対に嫌。ってか哲と将棋なんて勝ち越し決定確信犯じゃねえか!

「遊びって何よ御幸」
「大丈夫っすよ先輩ゴムなら持ってますから」
「む、椎名、髪の毛でもくくるのか?」

うわー。哲あんた本当に高三の男?そして御幸はどんだけ変態?

「第一この勝負に椎名を賭けてはいないぞ」
「今決まりました♪」
「ダメだ。俺は椎名を賭けた勝負は負けない」

…え、哲?

やばい、ムチャクチャそのセリフ嬉しいんだけど。哲、あたしが好きなこと気付いてんの?まあそんな訳ないんだけど。

「ははっ哲さん、それ告白みたいですよ」

何言っとんじゃ御幸コラー!!やばい、なんだか顔が熱くなってきた。

「む…椎名、そう聞こえたか?」
「え、いや、う、うん」

うんじゃないよあたし!めっちゃテンパってるー今哲に見つめられたら顔から火が出そう

「あぁ、じゃあそういうことだ椎名」

…へ?

「告白っすか哲さん!」
「そうだ」

いやいやいやいや。ちょっと待って、どうゆうこと?本当に告白?哲があたしに?でもそんなの

「て…哲」
「なんだ、椎名」
「…ちゃんと言って?」
「む、」

告白なら…聞かせてほしい。ちゃんとした、言葉にして

「…いや、だから…椎名はいつも俺を気にかけてくれていて、それがとても嬉しくて…愛らしいというか、愛おしいというか…その、なんだ」

ぷっ。ちょっと赤くなって、言葉に詰まらせている哲がかわいい。

「椎名にそばにいて欲しいというか…御幸にはやりたくなくてだな、…いや、えーっと…」
「哲」

すっかりテンパっている哲に、あたしは照れながらも笑いかける。

「15文字以内で」
「…む」

むむむ、と少し悩んで

「好きだ、俺と付き合ってくれないか」
「…喜んでっ」

ピッタリ15文字の愛の言葉。小さい「っ」とか句読点ぬいたらなんだけど(笑)そこはおまけにしといてあげようかな。



































(ははっ、哲さん目の前でひどいっすよ!)
(オラ抜けがけか哲!!)
(クス、遊夜、哲なんかでほんとにいいの?)
(うがら〜!!)
(哲さん堅物っすよ遊夜先輩、ヒャハハっ)
(な、みんな何でこんなに揃ってんのー!!)

確かに恋だった
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