待ち伏せ失敗?

ビシャッ

「なにすんの鳴!」
「うわ遊夜ずぶ濡れ」
「あんたが水ぶっかけたんでしょう!」

マネ業をすらすらとこなしているあたしは、我が校野球部のエース成宮鳴に水道の水を頭からかぶせられた。可愛い顔してるからって何しても許されると思うなこの野郎

「だって暑そうだから」
「夏だから当たり前よ」
「そのジャグ重そう」
「重いのよ」

大きいジャグを抱えてグラウンドにむかって歩くあたしの後ろに、ちょこちょこついてくる鳴。休憩なのかサボっているのか、鳴だからさっぱり分からない。

「持ってやろっか」
「え…いいの」
「嫌だ」
「何それ鳴のバカー!」

期待したあたしがバカ。鳴が手伝ってくれるなんて奇跡に近いよ。鳴は笑いながらグラウンドへとかけて行った。取り残されたあたしは1人、よたよたとジャグを持って歩く。

「椎名ご苦労さん」
「あ、雅さんっ」
「半分持ってやるよ」
「雅さん天使ー!」

雅さんが休んでるってことは休憩中か。さすがは我らがキャプテン心が広い。あたしはお言葉に甘えてジャグを持つ手を片手にした。

「びしょびしょだな」
「あーこれ鳴が…」
「やっぱりか」
「まあ暑いからいいんですけどね」

最後のほうは棒読み。服濡れてて気持ち悪いし

「あー!!何してんの雅さん!!」
「お前が何してんだ鳴」

角を曲がった途端、座り込んでいる鳴を見つけた。ほんと何してんのコイツ忍者ごっこでもしてんの?

「何で遊夜のジャグ持ってんのー俺の役目なのにっ」
「鳴さっきやだって言ったじゃん!」
「俺はツンデレを目指したんだよ」

は?何の話ですか鳴さんツンとかデレとか

「一回冷たくした後、隠れて遊夜をびっくりさせてから甘やかすの」
「何だソレ」
「ツンデレ作戦!」

そんなもんの餌食になってたまるかボケ!!ネーミングセンスねーよ

「あー待ち伏せ失敗。雅さんジャグかして」
「お前今から練習…」
「もうちょっとー」

雅さんからジャグを奪いあたしの腕を引いて笑う鳴に、顔が火照る。

「ツンデレ作戦は失敗したけど遊夜は落ちた」
「は!?」
「わーい今から遊夜俺の彼女〜」
「えっ」
「嫌なの?」

ニヤリと笑う鳴に見つめられて、嫌と言える筈なかった。






























(カルロ〜ごめんね)
(鳴ぬけがけかよ)
(え、何どしたの?)
(遊夜!何でもねぇ!)

確かに恋だった
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