光ときみの隣
 桜の花びらが空に舞っている。新学期が始まって二週間程が経ち、クラスの雰囲気にも慣れてきた。友人が朝の挨拶をしてきたので、私も「おはよう」と返す。
 教室へ着くと、女子のきゃあきゃあ言う声が響いてきた。朝から元気だなあ、などと呑気なことを考えていたら、私の座る場所が無くなっている。いじめとかそういうものではないが、私の座席は隣の席もろとも女の子達に取り囲まれていた。

「JOJO、おはよう」
「JOJO」
「今日は早かったのねJOJO」

 集団の後ろで鞄を手に持ち、HRのチャイムが鳴るのを待つ。背伸びして目の前の人だかりの中を見ると、ジョジョ、と呼ばれたその人が無表情で椅子に座っていた。
 ジョジョ、この学校でその名を知らない生徒はいないだろう。眉目秀麗、という言葉がぴたりと当てはまる。不良というレッテルを貼られてはいるものの、それを感じさせない程に凄まじい人気を誇るのだった。彼に憧れない女子などいないはずだ。
 もちろん、私もその一人である。だが彼女達のように積極的に接することはなく、遠くから見ているのがほとんどだ。かっこいい、と思うが、それはテレビの中で歌い踊るアイドルのようにどこか偶像めいたものを感じていた。

 チャイムが鳴り、女の子達は「またあとでね」「JOJO、じゃあね」と言いながら名残惜しそうに解散していく。やっとこさ自分の座席に座ると、ふう、と息を吐いた。

 隣では渦中の人物が同じ姿勢でじっと座ったままだ。右足を上にして足を組んでいる姿は、同年代だというのになんともいえないクールさを醸し出している。思わず見とれてしまった。

「空条くん、おはよう」

 顔に出さないよう、至って普通に言葉を発する。顔が赤くなってないだろうか、上手く笑えていただろうか。

「ああ」

 短い返事が返された時、神様仏様ありがとう、と心の中で復唱する。空条くんは黙ったまま、私が席に座る様子を横目でじっと眺めていた。





 空条くんが朝から学校に来るのは珍しい。本人はたぶん気まぐれなのだろうが、女の子達は登校してきた時間などを逐次メモしている。友人はそんな彼女達の姿を見ながら「頑張るねえ」と、どこ吹く風である。厄介ごとに関わるのはごめんらしい。

「名前、あんたもジョジョのこと好きなんでしょ?せっかく隣になったんだから、チャンスじゃない」
「うーん…好きなことは好きなんだけど、現実味がないというか、遠すぎるというか…」

 よく分かんない、と言うと、何よそれ、と頭を軽く小突かれる。でも分かる気がするなあ、と、友人はカフェオレのパックをストローで吸いながら相槌を打った。
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