悲劇の前日(ある世界
泣くな、といって頭を撫でたのはいつが最後だったろうか。りくはぼんやりと巻物に描かれた最愛の子供たちの絵をみながら考えた。
「みな、すぐに独り立ちしたからな」
りくはゆっくりと巻物を撫でクツリ、と喉で笑う。懐かしさに浸っているのかりくは無意識に目を閉じていた。我が息子とムスメは幸せに生きてくれるだろうか。できれば全員の孫の姿をみてみたいが寿命的に厳しいだろうか。
「しかし、それでもみたいものだな」 「何が、赤?」 「翡翠か。嫌、懐かしい巻物が出てきてな…全員の息子、娘の孫がみたいと思ってな」
いつの間にか現れた翡翠はりくの隣に座り、りく同様に視界に巻物をうつす。
「寿命的に厳しいな」
そういってクスクス笑う翡翠にりくは「そうだな」と同意をした。しかし、
「しかし、頑張りたいものだな。お前と共に」 「ふっ、りくと共になら頑張ろう」
りくの願いに当たり前だと言うかのように翡翠は巻物を先ほどのりくのように撫でながら同意をした。
悲劇の前日 二人は幸せな未来を望んでいた
なんとなく今度書き直そうとして放置していたもの
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