You Got a Mail | ナノ




【世良Side】

 大阪ガンナーズとの試合を終えて、医務室で左肩の応急措置を受けていたら、有里さんに声をかけられた。

「はい、これ世良君に」

 有里さんから渡されたのは、折り畳まれたメモ紙だ。

「なんスか、これ」

「ガンナーズの寺内選手から預かったの、世良君にって」

「寺内さんから?」

 慌ててメモ紙を開くと、中には走り書きでメールアドレスが記されていた。

「スタジアムの受付にいたら、囲み取材を終えた寺内選手がやってきてね。これを渡してくれって。多分、肩の具合を気にしてくれてるんじゃない?」

 有里さんの言葉を受けて、ちらりと左肩に目をやる。貼られたばかりの湿布があるそこは、試合終了間際、ボールに突っ込んでいった時に寺内さんに蹴られた箇所だ。
 蹴られたと言っても、寺内さんがちょうどボールをクリアしようとしていたところに俺が構わず飛び込んで行って接触してしまった訳なので、あの人に罪は全くない。
 それなのにこんな風に気にかけてくれるなんて、きっと根が優しい人なんだな。日本代表選手って性格の良し悪しも選考基準に含まれてるのかな、なんて事を思ってしまった。

 とにかく出来るだけ早くメールを送ろう。
 寺内さんが気に病むことないように、大丈夫ですって。


【寺内Side】

 なりふり構わず飛び込んできた姿を見て、まるで弾丸のようだと思った。

 試合が終了してすぐは悔しさが先立っていてそれどころではなかったけど、時間が経つにつれてあの時の接触が気になって、気付けばETUの関係者だと思われる女性にメモ紙を託していた。

 今も僅かに残る、蹴った時の感触。ゴールポストに迫っていたボールをクリアしようと力を込めていただけに、きっと彼の肩は酷いことになっているに違いない。サッカーはぶつかり合う競技だと分かってはいるけど、やはり自分が怪我に絡んでいるいう意識があると、どうしても怪我の具合が気になってしまうものだ。

 負け試合の後で重苦しい雰囲気のバスの中で、窓越しに景色を眺めているとスーツのポケットが震えた。正確にはポケットの中の携帯が、だ。いきなりだったこともあるが、彼からのメールかもしれないということもあって必要以上にドキリとする。
 周りを一瞥した後に、こっそり携帯を開く。メールの差出人を確認すると、やっぱり彼からだった。ざっと目を通すと、若い彼らしくとても溌剌とした文面で、怪我はたいしたことないから気にしなくても大丈夫だと書いてあった。

 あれだけ強く打ち付けたんだから、たいしたことないはずがないのに。少なくとも、しばらくは痣が残るだろう。

 すぐに気付いた、俺を気遣ってくれたんだと。
 メールの向こうから伝わる思いやりに、俺はひっそりと笑んだ。



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