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2011/09/03 18:18


「セリー」

今日の試合で、日本代表GKの守りをものともせずに華麗なゴールを決めた王子は、何故だかちょっと不機嫌そう。

「どうしたんすか?」
「責任取ってくれる?」
「え、なんの責任っすか!?」

脈絡のない話にびっくりした俺は、ソファの上で思わず姿勢を正す。

「今日の試合で、セリーが後ろから僕に突撃して乗っかってきたでしょ?」
「あ、はい……嬉しくってつい」

川崎フロンティアに先制されていたところに王子が同点弾を決めたのだ、その時の俺はもうすっごく興奮して、ちょっと調子に乗ってしまった。

「あの時にちょっと舌噛んじゃったんだけど」
「え!?」
「そこ、今も痛むんだよね」
「す、すみません!」
「だから責任取って」

責任……って、どう取ればいいんだろう?
困惑する俺に、王子はずいっと顔を近付けた。

「怪我した時は唾つけて治すものだよね?」
「へ」

つまりそれって───

「舐めろってことっすか……?」
「勿論」

王子は楽しげに笑うと、口を開いて舌を晒す。

「ほら早く、セリー」

迷う俺を急かすように、王子は更に距離を縮めてきた。観念して怖ず怖ずと舌を出すと、舌先が王子の舌に触れる。途端にとてつもない恥ずかしさに襲われて、慌てて舌を引っ込めようとしたが駄目だった。

「んっ」

後頭部を掴まれ、強引にキスされる。互いの咥内で、湿った音をたてながら舌が絡み合う。舌の表面をツツっと撫でられたかと思うと、今度は舌の裏を擽られた。

「んふ……っはあ」

解放されると同時に、熱の篭った吐息が漏れた。口の周りが唾液で濡れていて、俺は慌てて袖でぐいっと拭う。眼前の王子はというと、唾液で濡れたところをペろりと舌で舐めとっていた。

「結局王子が俺を舐めてばっかりだったじゃないすか」
「はは。つい、ね」
「傷、治りそうっすか?」
「傷? ああ、それ実は嘘なんだよね」
「……はい?」
「セリーとキスしたかったからさ、ごめんね」

フィールド上で王子に翻弄された選手の気持ちが今ならよく分かる。
全く、フィールド外でもこの人は油断ならない、と俺は心底思った。



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